2016年6月29日、厚労省が「ウイルス性出血熱への行政対応の手引き」を公開した。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000128670.pdf

エボラ出血熱と同様な一類感染症(クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、南米出血熱)の患者が国内で発生した際に、行政検査、患者 搬送、入院措置や積極的疫学調査等の対応を迅速に行うために作成された。

 感染研BSL4施設と直接関連する「7 検査診断」に対するコメントを下記に記述する。

①検査診断法・・・ウイルス分離法

 従来、感染研が最優先に掲げてきたウイルス分離法による検査診断法が削除されているが、理由は「7.3  検査法 」の下記記述から明らかである。
 「急性期患者の検査の場合、迅速性と正確性等を勘案して遺伝子増幅検査を 優先して実施することとしている。検体を受け取った後には、血液から遺伝 子(RNA)を抽出(約 0.5 から1時間程度を要する)し、上記の遺伝子検査 に供する。リアルタイム RT-PCR及びコンベンショナル RT-PCRにそれぞれ 約2時間と約4時間を要する。さらに高感度 nested RT-PCRまで終えるのに は、遺伝子抽出から計約 10 時間を要する。」
 BSL4施設の使用に関しては一切の言及がないが、ウイルス分離法以外の検査法(PCR法など)はBSL3(BSL2)施設で対応するものと推察する。

②確定患者の治療支援

 手引書は「行政検査、患者搬送、入院措置や積極的疫学調査等の対応」に関するものであり、感染研による確定患者の治療支援に関する記述はほとんどない。
 「7.3  検査法」の関連記述は「 当該患者がエボラ出血熱等、一類感染症に罹患していることが確認された場合には、病原体診断以外に、患者検体(特に血液)中におけるウイルス量の測定、感染性ウイルスの存在の有無、病原ウイルスに対する抗体誘導の有無等のより詳細な検査が必要となる。」である。
 ウイルス量の測定や感染性ウイルスの存在の有無の確認はPCR法によるものと推察する。BSL4施設を必要とするウイルス分離法による場合は、ウイルス量の測定の能否と測定に要する日数などの情報の開示が必要である。
 
③検体の輸送

 「7.2 検体材料の輸送」の記述「一類感染症に分類されるウイルス性出血熱に関連する検査においては、検体を安全かつ迅速に感染研へ輸送する必要があり」から、検体は感染研村山庁舎へ輸送されると推察する。
 2016年2月9日の「国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議(第三回)」で決定された「国際的に脅威となる感染症対策の強化に関する基本計画」における「地方衛生研究所・検疫所において検体検査を迅速に行う体制を整備」は一切考慮されていない。