2023年11月20日東京新聞朝刊に掲載された感染研「エボラウイルス動物実験へ」の記事に驚いた。「感染研は11月上旬に地元住民に説明し、実験に向けた準備に着手した。」とあるが、住民説明会開催の情報を全く知らなかったので、早速、武蔵村山市と東京新聞に確認した。「地元住民に説明」とは「感染研村山庁舎施設運営連絡協議会での報告」であることが分かったので、感染研は市民説明会を開催すべきであるとの要請を市に依頼した。感染研の回答は「予定していない」とのそっけないものであった。

 

 ところで、エボラ感染症に対するワクチンや治療薬はすでに外国で開発されており、エボラ発生現地での有効性が確認されている。治療薬の日本人に対する有効性の検証には日本人の臨床試験が必要であるとしても、エボラウイルス感染を強いる臨床試験ができるとは思えないし、有効性が確認されている治療薬に対する日本での動物実験の必要性があるとも考えられないので、動物実験の開始はP4実験装置を稼働し危険なP4ウイルスを輸入し保管していることに対するアリバイ作りではとの疑念が生ずる。百歩譲って、実験担当者の感染によって臨床試験が可能になり、日本人に対する治療薬の有効性の検証ができれば、動物実験の意義があるとするべきか?

 

 実験担当者の感染については、感染研のグローブボックス型実験装置(P4)と同様な装置を用いて外国で行われたエボラ動物実験において、手が震えたことによる針刺し事故での感染が報告されている。日本では地震による震えもあり得る。感染研では、2023年8月、ベテラン職員が実験室内で無意識のうちに腸チフス菌に感染発症した事故が発生しており、エボラウイルスの実験室内での感染が危惧される。エボラ感染については、ヨーロッパ、アメリカなどの先進国の専門の医療機関の作業スタッフが、防護服による完全防備に加えて脱着時のマニュアルなどもそろい、事前に訓練を受けていたはずにもかかわらず感染した事実も報告されており、増殖力が非常に強い(数十個で感染が成立する)エボラウイルスの感染を完全に防ぐことの難しさが指摘されている。

 

 エボラ感染症の初期症状はインフルエンザ症状に類似しているため、感染した実験担当者が一般病院で受診して市民に感染が拡大する事態は絶対に回避すべきであるなどの市民の懸念を受けて、武蔵村山市当局は厚労大臣と感染研所長に対して文書「国立感染症研究所村山庁舎の運営等に関する要望書」(2023年12月18日)を提出した。40年前のP4施設の隠密建設に始まり、10年前のエボラアウトブレイクにおけるP4施設でのエボラ感染検査の虚偽説明(感染検査はP4施設ではなく、P3施設でRT-PCR法によって行われた)、2023年8月に発生した実験室内での腸チフス菌感染事故に対する市民への説明責任放棄、ワクチン・治療薬の検定のためのエボラ動物実験開始に対する市民説明会の開催拒否(2023年11月)など、感染研のリスクコミュニケーションには疑念を持たざるを得ない。

 アンネの≪隠れ家≫を親衛隊保安部(SD)に密告した人物の正体を突き止めるための最新の調査技術を駆使した国際的プロジェクトが2016年にスタートした。そして、調査チーム(コールドケース・チーム CCT)により数年にわたって解明された調査結果が上記出版本(20221月)に報告された。

 「アンネの日記」や「思い出のアンネ・フランク (ミープ・ヒース著)」などを読んで、2011年にオランダでアンネの≪隠れ家≫を見学して以来、密告者の正体を知りたい欲求が消えることは無かったので、早速、翻訳本(20222月)を購入して読み通した。アンネの≪隠れ家≫を含む住所リストをSDに渡した人物の特定に異論は無いが、194484日午前10時、SD本部に密告電話をしたのは別人ではとの疑念が残った。住所リストの提供者が、さらに電話によるアンネの≪隠れ家≫の通報を行う必要性はないのではと思われる。ちなみに、住所リストをSDに渡した人物を暴露した匿名の手紙(19456月~12月)をオットー・フランクが直ちに公にして密告者を告訴していれば、住所リスト提供者(1950年死亡)と電話通報者が同一人物か否かは確定できた可能性がある。

 ところで、上記本の出版後(20223月)、歴史家らがCCTの調査結果について「おしなべて根拠薄弱、明白な誤読が幾つもあり、誇張も加えられ、評価対象になり得ない。」との批判的報告書を発表した。オランダの出版社は報告書に基づき、直ちに販売中止を決定した。しかし、世紀の未解決事件への対応としては極めて一方的(政治的)であるから、少なくとも、オランダ解放のしばらく後にオットー・フランクに届いた(住所リストをSDに渡した人物を名指しした)匿名の手紙に対する評価を行い、CCTの反論を聞くべきだと思う。

 ちなみに、アンネ・フランク基金(スイス・バーゼル)とアンネ・フランク財団(オランダ・アムステルダム)は両者ともオットー・フランクが設立したにもかかわらずお互いに折り合いが悪く、著作権をめぐる訴訟を何度も起こしている。今回のCCT調査結果に対しても、アンネ・フランク基金は「間違いだらけ」と主張し、アムステルダムにある博物館「アンネ・フランクの家」(アンネ・フランク財団)は「価値のある新しい重要な情報と興味深い仮説を生み出した」と評価する声明を発表している。密告者をユダヤ人と特定したCCT調査結果を今なおヨーロッパに蔓延る多くの反ユダヤ主義者が不当に利用することへのアンネ・フランク基金側の反発は、アンネ・フランク密告事件の複雑性を示している。なお、CCTの調査は反ユダヤ主義問題に注意を払って行われたことが、上記本各所に見られる用心深い記述から明らかである。

 本のタイトルに期待して図書館から借り出した本多郁夫氏の著書「知るほどに楽しい植物観察図鑑(2011)」のコラム「蔓(つる)の右巻き・左巻き」を読み、アサガオなどの蔓が「左巻き」か「右巻き」かの記述が著者によって異なることを知りました。本多氏は、アサガオなど蔓の左側を巻き付く相手にすり寄せるように巻き付くのは「左巻き」、右側をすり寄せるように巻くのは「右巻き」とする植物の本性に沿った(古典的)考え方をコラムで改めて主張しています。ところで、日本植物学会の「学術用語集植物学編(1956)」では、他の分野で広く用いられている(3次元)螺旋構造に対する「右巻きらせん(右ねじ)・左巻きらせん(左ねじ)」の定義(右ねじ=時計回りに回すと前進する)が蔓の螺旋構造に適用されており、蔓の古典的「左巻き」及び「右巻き」は真逆の「右巻き」及び「左巻き」になっています。学術論文などでは後者の定義が採用され、アサガオは「右巻き」です。

 趣味の分野では、学術的定義に拘束されないので、本多氏のように植物の本性的定義に愛着を持つアマチュア研究者は少なくないと思われます。とはいえ、一般の人々の混乱を回避するには、議論を招く「右巻き・左巻き」のみの呼称ではなく、螺旋構造の定義呼称「右巻きらせん・左巻きらせん」、または、それらの簡易呼称「右らせん・左らせん」を蔓の巻き方にも適用するのが簡便だと思います。アサガオは「右巻きらせん」または「右らせん」です。ちなみに、遺伝子の本体である2重螺旋DNAもなぜか「右巻きらせん」です。



 2011年の福島原発事故の反省を受けて2012年に発足した原子力規制委員会によって、新規制基準「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」が2013年に制定された。既存施設もこの基準に合致しなければ運転継続(再稼働)は認められない。

 

 東南海地震などに起因する浜岡原発の放射性物質放出事故は、偏西風によって首都圏にも大きな影響が及ぶ可能性がある。特に、浜岡原発設置地盤に確認されているH断層系(H1~H9)が地震などで動けば、原発の崩壊・爆発に直結する。

 中部電力は、H断層上の地層年代 の推定

(1) H2断層上の沖積層の堆積年代は約1万年前

(2) H9断層上の笠名礫層相当は約10万年前

(3) H9断層上の古谷泥層相当は約12~13万年前 

とH断層系の形成時期の推定(約300万年前)から、「H断層系は、少なくとも後期更新世以降における活動は無い」と結論している。

 しかし、越路論文(*)によると、H断層系の形成時期は、笠名礫層相当が堆積した後の8~10 万年以降の海退期と推定されており、 H9断層上の古谷泥層相当は.後期更新世における海進期,海退期の繰り返しにより、H 断層系が形成された後の凹状地に再堆積した可能性が指摘されている。


(*)越路南行 「浜岡原子力発電所の地盤の安全性を検証する(2014)」
        「浜岡原発の敷地地盤の審査状況と批判的検討(2018)」

 
 中部電力が越路論文の指摘「H断層系の形成時期は8~10 万年以降」を明確に否定できなければ、H断層系は「後期更新世(約12~13万年前)以降の活動を否定できない断層」であり、浜岡原発の運転継続(再稼働)はできない。

 2000年11月5日の毎日新聞のスクープによって発覚した藤村新一氏の旧石器発掘捏造事件をコロナ禍の引きこもりで思い出したので、捏造事件10年後に藤村新一氏とのインタビューに成功した上原善広氏の著書「発掘狂騒史(2017年)」など、捏造事件とその背景についてのノンフィクション本を改めて読んでみた。アマチュア考古学研究者の藤村新一氏が座散乱木遺跡(1981年)から上高森遺跡(2000年)まで、20年にわたり自ら埋め込んだ石器を掘り出して見せて、日本列島の旧石器時代が数十万年前(原人の時代)にさかのぼるとした捏造事件である。考古学の専門家やマスコミがアマチュア研究者に易々と騙された遠因として、考古学界を二分した「前期旧石器存否論争」やバブル経済期の世相などが指摘されているが、発掘調査の当事者である専門家から藤村新一氏が耳にした地層や石器などの期待情報が、教唆扇動として、発掘捏造の直接的要因になったと思われる。


 衝撃的な捏造事件以後の考古学界の通説では、4万年前以前の原人の渡来による前期旧石器時代の存在は完全に否定され、4万年前以降の新人の渡来によって後期旧石器時代が始まったとされる。しかし、捏造事件と関わりのない岩手県の金取遺跡(1985年)、長野県の竹佐中原遺跡(2001年)、島根県の砂原遺跡(2009年)など4万年前以前の前期旧石器発見の報告もあるので、旧石器発掘捏造事件のトラウマ克服のためにも「前期旧石器存否論争」の再燃を期待したい。

 

 ちなみに、日本列島に前期旧石器時代(原人)の存在を認めない立場をとる考古学専門家の見解に疑念を抱くこともある。金取遺跡の第III文化層は、手斧状石器など確実な人工石器が出土しており、地層の年代は、発掘後20年を経て、火山灰層序学的研究に基づいて約6万年前と確定しているのに、金取遺跡は年代や地層の検討、類似例の確認など多くの課題が残っているので前期旧石器遺跡とは認めないとする専門家の否定的見解に、捏造事件のトラウマを感じる。また、東アジア大陸の原人が渡来できるのは、海面低下によって日本列島が陸橋で大陸と繋がった氷期に限定的となるので、日本列島での原人の存在を否定する見解が捏造事件以後の考古学の主流であるが、氷期に朝鮮半島から陸橋経由で日本列島に渡来したと考えられるナウマンゾウやオオツノシカなどを追って原人が渡来した可能性は排除できないと思う。前期旧石器時代の東アジア大陸の原人は、中国の周口店にある竜骨山猿人洞(70万~20万年前)で頭蓋骨化石が発掘された北京原人が有名であるが、朝鮮半島(韓国)でも全谷里遺跡(30万~7万年前)など前期旧石器遺跡が確認されており、原人が生存していたのは確実である。ところで、最近、中国南部の福岩洞窟から12万~8万年前の新人の歯化石が多数発見された。新人の出アフリカを6万年前とするアフリカ単一起源説に矛盾するが、12万~8万年前に東アジア大陸に新人が存在すれば、前期旧石器時代(4万年前以前)に新人が大陸から日本列島へ渡来した可能性も考えられる。

 コロナ禍の引きこもりで青山透子氏の著書「日航123便 墜落の新真実」を読んだ。事故原因について興味をそそる内容で、早速、関連する何冊かの本を図書館から借り出し、事故調査報告書などにも目を通した。

 

 フライト・データ・レコーダの飛行データを検討すると、事故調報告書通り、事故原因は後部圧力隔壁の損壊以外では合理的な説明ができそうにない。しかし、事故調報告書の客室内の急減圧・急冷却の結論は、生存者の証言などによる緩やかな減圧と矛盾するので、事故調報告書付録4「後部圧力隔壁からの与圧空気の流出の数値計算による検討」に記載された計算モデルなどを考察した。計算モデルの基礎式は、機内をコックピット、客室、床下貨物室、垂直尾翼(2分割)、隔壁後方(3分割)の計8分割し、各室内部の空気は静止、一様、断熱(等エントロピー)を仮定して導出されている。下記の事項に疑問が生じた。
 

(1)複雑な非定常3次元空気流れを単純化した計算モデルの有効性が(実験との比較などによって)検証されていない。特に、「各室内部の空気は静止」及び「一様」の仮定が急減圧・急冷却の計算結果をもたらしたのではとの疑問が残る。

 

(2)報告書付録4の付表―1(p62)に記載されている流量基礎式G(圧力PBが臨界圧力より高い場合)の圧力比(PA/PB)は(PB/PA)の表記ミスと思われる。

 

(3)客室V(1)を、搭乗者が着席する主客室V(1-1)と圧力隔壁に直結する主客室天井の上部および後部トイレの後方部V(1-2)とに2分割すれば、下記の推測によって、事故報告書の急減圧・急冷却と証言などによる緩やかな減圧との矛盾が解消するように思われる。

 「圧力隔壁の損壊直後、V(1-2)室の空気が圧力隔壁の開口部から(音速で)流出して機体後部を破壊するとともに、V(1-2)室の急減圧・急冷却(霧発生)をもたらす。V(1-1)室とV(1-2)室の圧力差で後部トイレ上部のパネルがはずれ、 V(1-1) 室とV(1-2)室の空気がパネル開口部から混合する。 V(1-2)室の急減圧は幾分回復し、V(1-1) 室は緩やかに減圧・冷却するとともに、霧が流入・発生するが、エアコン・パックから暖かい空気が供給されて霧が消える。はずれたパネルや剥がれた断熱材などが圧力隔壁の開口部を塞ぐことでV(1)の空気流出量が減少し、減圧・冷却は緩やかになる。しかし、継続する空気流出によってV(1)の減圧が進行して、客室高度警報音が鳴り出す。」

 202075日に投開票された新型コロナ禍での東京都知事選挙は小池氏の圧勝に終わった。都知事選当選者の開票区別得票数について、本ブログ『雑感雑記 (10)都知事選「ムサシによる不正選挙?」(2016103日)』で、住民数が小さく投票データのばらつきが大きい町村部を除いた区市部では「知事当選者の区市得票数分布は区市有権者数分布と良好に一致する」ことを指摘した(第一報は2014年6月)。得票数分布は知事当選者の各区市得票数を区市部総得票数で除した値(総和=1)であり、区市有権者数分布は各区市有権者数を区市部総有権者数で除した値(総和=1)である。

 今回の都知事選は、区市のコロナ感染者数の大小により区市得票数分布が区市有権者数分布から逸脱することが考えられるので、東京都選挙管理委員会の都知事選投開票データから求めた区市得票数分布と区市有権者数分布との比較を行った(図1)。予想に反して、区市得票数分布は区市有権者数分布と良好に一致し、コロナ禍による明らかな逸脱は見られない。


図1 2020年都知事当選者(小池)の区市得票数分布(―)と区市有権者数分布(- - -)との比較

 区市得票数分布の区市有権者数分布との一致の程度を数値化するために、区市得票数分布の区市有権者数分布に対する比をExcelで統計解析した(表1)。各選挙年データの平均値(0.995~1.013)、標準偏差(0.037~0.074:平均値の数パーセント)、最小値(>0.75)、最大値(<1.25)から、区市得票数分布と区市有権者数分布との一致は全都知事選(1999-2020年)で同程度に良好であることが分かる。今回の都知事選での区市得票数分布の区市間変動も1999-2016年都知事選と同程度であり、都知事選仮説はコロナ禍にも耐えた。ちなみに、選挙機器ムサシによる不正選挙が噂された2012年(猪瀬)および2014年(桝添)知事当選者の区市得票数分布にも区市有権者数分布からの不自然な逸脱は見られない。

 

表1 都知事当選者の区市得票数分布 の 区市有権者数分布に対する比

 

感染研は、20181115日、突如、BSL4ウイルス(エボラ出血熱、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病、南米出血熱)輸入の意向を表明し、2019927日にBSL4ウイルスの輸入と感染研村山庁舎BSL4施設での保管を公表した。

 

 昨日、201911月6日、感染研村山庁舎BSL4施設についての説明会があり参加した。その場で、下記の「ウイルス分与後の研究計画」が提示された。

 

①分与を受けて、ウイルスの性状解析(感染性の確認、塩基配列の決定等)を実施

2020オリンピック・パラリンピック東京大会までに、エボラ出血熱等に対する中和抗体測定システムを開発

③大会終了後も、中和抗体測定システムの開発、遺伝子検査法の改良を継続

 

 塩崎厚労相と藤野武蔵村山市長の感染研村山庁舎BSL4施設の稼働に関する201583日付の合意「村山庁舎のBSL-4 施設の使用は、感染者の生命を守るために必要な診断や治療等に関する業務に特化する。なお、制約なく研究目的で使用することに対する地域住民の懸念を払拭するよう、コミュニケーションを積極的に行いながらBSL-4 施設を使用する。」の記述は、研究開発とは何ぞやの不毛な議論を避けて、診断や治療等に関する業務以外の研究開発を除外している。「研究計画」と露骨に銘打った感染研の上記研究項目「ウイルスの性状解析」、「中和抗体測定システム開発」、および「遺伝子検査法改良」は紛れもなく研究開発であり、厚労省と武蔵村山市との合意文書に違反している。感染研は、武蔵村山市当局および市民を軽視して、あくまで、上記「研究計画」は、感染研村山庁舎BSL4施設での診断や治療等に関する業務に含まれるとの詭弁を弄する心算用か。

 オリンピックを口実に、厚労省と武蔵村山市との合意文書を無視して、BSL4ウイルスを輸入し研究開発を強行する感染研の姿勢は、予研村山分室にP4施設の建設を強行(1981年)した予研のそれを彷彿とさせる。感染研は、即刻、武蔵村山市からの移転を遂行されたい。

 2018年11月15日、突如、感染研がBSL4ウイルス(エボラ出血熱、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病、南米出血熱)輸入の意向を表明した。

 BSL4ウイルス輸入に関しては、既に、2015年8月4日付の本ブログ記事『武蔵村山市長「村山庁舎のBSL-4施設の稼働は、やむを得ないものと判断する」』に、下記の記述を行っている。
「合意の翌日(8月4日)には、厚労省がエボラウイルスなど危険な病原体の輸入の検討を始めたことが報道された。オウム真理教の炭疽菌散布(1993年)によって日本はバイオテロ容認国とみなされ、1999年の米国議会で病原体やその遺伝子の分与禁止が決定されたが、バイオテロ容認国のレッテルは剥がされたのであろうか。市長コメントにある「国内にエボラ・ウイルス等の病原体がないため、現実的には、当面検査以外の業務を行う状況にないことを前提」の記述は、国内に輸入病原体があれば検査以外の研究業務を容認することを意味する。」

 BSL4ウイルス輸入によって、武蔵村山市民は、同ブログ記事の記述「BSL4施設の稼働期間は、首都直下地震の発生、重大事故の発生、新設BSL4施設への移転、または残り十数年の耐用年数経過までであろう。」における「重大事故の発生」確率が飛躍的に増大することに対する余計な覚悟が強いられる。

 2015年8月武蔵村山市がBSL4施設稼働を容認したことにより、感染研がなし崩し的に検査以外の研究業務を遂行することは容易に想定されたが、武蔵村山市以外の適地におけるBSL4施設の確保の検討を約束しておきながら、なぜ、オリンピックの開催まで2年を切った時点で、突如、オリンピック開催理由を持ち出して、BSL4ウイルス輸入の意向を表明したのだろうか。長崎大学のBSL4施設の建築工事を本年12月に開始するための陽動作戦か? はたまた、「BSL4施設計画の差し止めを求める会」が長崎大のBSL4施設計画内容の情報開示を求めて、長崎大と長崎県及び同市を長崎地裁に提訴する11月16日に狙いを定めた陽動作戦か?

 ここで、改めて、市長コメント「 大臣からは、会談の中で私が申し上げた要望事項に対する確認事項に沿って施設の運営を行うとの約束をいただき、特に施設で実施する業務は、感染者の生命を守るために必要な診断や治療等に関する業務に特化することや、国内にエボラ・ウイルス等の病原体がないため、現実的には、当面検査以外の業務を行う状況にないことを前提として、更に、当市以外の適地におけるBSL-4施設の確保について検討し、結論を得るとのお話もいただいたので、村山庁舎のBSL-4施設の稼働は、やむを得ないものと判断する。」を注意深く吟味すれば、下記の『
論理的推論』により、「感染研がBSL4ウイルスを輸入すれば、市長のBSL4施設稼働容認は失効する」ことを指摘しておきたい。


 『
BSL4ウイルスの輸入により、「国内にエボラ・ウイルス等の病原体がないため、現実的には、当面検査以外の業務を行う状況にないことを前提として」とする市長のBSL4施設稼働容認に対する前提が崩れるので、市長の判断村山庁舎のBSL-4施設の稼働は、やむを得ないものと判断する。」は無効となる。従って、感染研がBSL4ウイルスを輸入すれば、市長のBSL4施設稼働容認は失効する。』

 

 参考のために、2018年8月3日付の「厚生労働大臣確認事項」を下記に掲載する。

                ========================

             厚生労働大臣 確認事項

                                                                                             平成27年8月3日

                            厚生労働省

  1. 国立感染症研究所村山庁舎(以下、「村山庁舎」という。)の施設運営は、市民の安全・安心の確保を最優先に対応する。また、災害や事故に備えるため、国として、市や警察等の関連機関とも連携し、周辺住民に対する円滑な連絡や状況説明について、責任を持って対応する体制を構築するほか、このような市との連携も踏まえ、施設及び施設周辺の安全対策や事故・災害対策及び避難対応の強化を進める。

  2. 村山庁舎のBSL-4施設の使用は、感染者の生命を守るために必要な診断や治療等に関する業務に特化する。なお、制約なく研究目的で使用することに対する地域住民の懸念を払拭するよう、コミュニケーションを積極的に行いながらBSL-4施設を使用する。

  3. 村山庁舎の施設運営の透明性を確保するため、国立感染症研究所 村山庁舎 施設運営連絡協議会を継続して開催し、施設の使用状況を報告するとともに、施設見学会や説明会も継続的に実施し、積極的な情報開示や地域とのコミュニケーションを推進する。また、村山庁舎のBSL-4施設運営に当たっては、外部有識者を活用したチェック体制を確保する。

  4. 施設の老朽化も踏まえ、日本学術会議の提言等も参考にし、武蔵村山市以外の適地におけるBSL-4施設の確保について検討し、 結論を得る。
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 2016年6月29日、厚労省が「ウイルス性出血熱への行政対応の手引き」を公開した。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000128670.pdf

エボラ出血熱と同様な一類感染症(クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、南米出血熱)の患者が国内で発生した際に、行政検査、患者 搬送、入院措置や積極的疫学調査等の対応を迅速に行うために作成された。

 感染研BSL4施設と直接関連する「7 検査診断」に対するコメントを下記に記述する。

①検査診断法・・・ウイルス分離法

 従来、感染研が最優先に掲げてきたウイルス分離法による検査診断法が削除されているが、理由は「7.3  検査法 」の下記記述から明らかである。
 「急性期患者の検査の場合、迅速性と正確性等を勘案して遺伝子増幅検査を 優先して実施することとしている。検体を受け取った後には、血液から遺伝 子(RNA)を抽出(約 0.5 から1時間程度を要する)し、上記の遺伝子検査 に供する。リアルタイム RT-PCR及びコンベンショナル RT-PCRにそれぞれ 約2時間と約4時間を要する。さらに高感度 nested RT-PCRまで終えるのに は、遺伝子抽出から計約 10 時間を要する。」
 BSL4施設の使用に関しては一切の言及がないが、ウイルス分離法以外の検査法(PCR法など)はBSL3(BSL2)施設で対応するものと推察する。

②確定患者の治療支援

 手引書は「行政検査、患者搬送、入院措置や積極的疫学調査等の対応」に関するものであり、感染研による確定患者の治療支援に関する記述はほとんどない。
 「7.3  検査法」の関連記述は「 当該患者がエボラ出血熱等、一類感染症に罹患していることが確認された場合には、病原体診断以外に、患者検体(特に血液)中におけるウイルス量の測定、感染性ウイルスの存在の有無、病原ウイルスに対する抗体誘導の有無等のより詳細な検査が必要となる。」である。
 ウイルス量の測定や感染性ウイルスの存在の有無の確認はPCR法によるものと推察する。BSL4施設を必要とするウイルス分離法による場合は、ウイルス量の測定の能否と測定に要する日数などの情報の開示が必要である。
 
③検体の輸送

 「7.2 検体材料の輸送」の記述「一類感染症に分類されるウイルス性出血熱に関連する検査においては、検体を安全かつ迅速に感染研へ輸送する必要があり」から、検体は感染研村山庁舎へ輸送されると推察する。
 2016年2月9日の「国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議(第三回)」で決定された「国際的に脅威となる感染症対策の強化に関する基本計画」における「地方衛生研究所・検疫所において検体検査を迅速に行う体制を整備」は一切考慮されていない。

 12014-2015年の西アフリカでのエボラウイルス病(EVD)アウトブレイクに便乗して強行稼働された国立感染症研究所(感染研)村山庁舎のBSL4施設に関連する事象を国立予防衛生研究所(予研)村山分室が設置された当時から時系列的に記録する。
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1961           予研村山分室設置:「ワクチン検定」
1966           都営村山団地建設:「予研に近接」
1967             市立第五小学校設立:「予研に隣接」(1998 雷塚小学校に統合)
1970             市立第六小学校設立:「予研に隣接」(1998 雷塚小学校に改名)
1974             都立村山養護学校設立:「予研に隣接」(2008 都立村山特別支援学校に改名)
1979.09.21 P4施設建設にあたり公衆衛生局保健情報課長および予研所長が武蔵村山市当局に口頭挨拶
1980.04.10 朝日新聞記事「危険度4の病原体を扱える施設は、目下、厚生省が予研村山分室に建設中」に市民が気付き、施設の安全性などに関して市当局に電話質問
1981.06       予研(厚生省)が市民に一切のリスク説明もせずにP4施設を予研村山分室に建設
1981.12.24 村山団地連合自治会提出の「国立予防衛生研究所村山分室内『高度安全実験室』の実験開始差し止めに関する請願」を武蔵村山市議会が採択
1981.12.24 武蔵村山市議会が「P4施設建設等についての厚生省の措置に関する意見書」を決議し厚生大臣に提出
1982.01.12 厚生省が「P4施設の安全性について市民の合意が得られるまで実験を開始しない」と武蔵村山市長に確約
1982.06.25 武蔵村山市当局が「稼働協定は、厚生省と武蔵村山市だけでなく自治会(反対団体)も含めた中で締結する」ことを市議会で約束
1982.08.22 武蔵村山市当局が「国立予防衛生研究所村山分室の高度安全実験室『P4』についての説明会」を第五小学校で開催
1983.02.10 予研が研究開始にかかる協定の締結について武蔵村山市当局に申し入れ
1983.03.29 武蔵村山市当局が地域住民の不安などから協定締結を拒否、P4実験室問題対策協議会を当事者に加えることなどを文書回答
1984.10   理化学研究所が「ライフサイエンス筑波研究センター(P4施設)」を開設
1987.03.14 国内初のラッサ熱確定患者 [シエラレオネ⇒東大医科研附属病院入院⇒抗体検査{予研P2施設(60度加熱不活性化) 陽性}⇒ウイルス分離検査(CDC 陰性)⇒退院⇒都立荏原病院入院⇒ウイルス分離検査(CDC 陰性)⇒退院⇒典型的重症ラッサ熱と診断]
1988.06-1989.03
                    理化学研究所ライフサイエンス筑波研究センターP4施設で2件のP4実験(遺伝子組み換え)が行われたが、住民の反対運動(筑波P4訴訟 1988-1993)により、P4実験は中止され、P4施設は見学施設として利用
1997.04        予研村山分室を感染研村山分室に改名
2005.04        感染研村山分室を感染研村山庁舎に改組
2005.12        総合科学技術会議が「BSL4施設稼働に向けた立地条件等調査・研究」を決定
2006             高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)ワクチンの動物実験(カニクイザル)をP4施設(BSL3+)で実施
2006-2008 感染研村山庁舎にインフルエンザウイルス研究棟(9号棟、BSL3施設)建設
2006.07-2008.03
       科学技術振興調整費による調査研究「BSL-4 施設を必要とする新興感染症対策」(責任機関 国立感染症研究所)の実施
2006.09.29 感染研近隣住民提出の「『危険度レベル4(P4)施設を稼働させるための調査研究』において、国立感染症研究所村山庁舎を『適地』としないよう求める陳情」 を武蔵村山市議会が採択
2006.09.29 武蔵村山市議会が「高度安全実験(BSL-4)施設を稼働させるための調査、研究において、国立感染症研究所村山庁舎を適地としないよう求める意見書」 を決議し関係機関に提出
2008.10     武蔵村山市自治会が感染研村山庁舎をBSL4施設の稼働・新設の適地に選定しないよう8400筆に上る署名運動
2013.12.02 ギニアでEVDであると推定される事例が発生
2014.03     日本学術会議が「我が国のバイオセーフティレベル4(BSL-4)施設の必要性について」を提言
2014.03.23 WHOが西アフリカでのEVDアウトブレイクを発表
2014.08.08 WHOがEVD流行に対して「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言
2014.09.19 国連が「エボラ緊急対応ミッション」を立ち上げ
2014.10.02 安倍首相がBSL4施設早期稼働を言明
2014.10.27 国内1人目のEVD疑似症患者(西アフリカ⇒羽田空港⇒国際医療研究センター)感染研村山庁舎BSL3施設で検体検査(PCR検査 陰性)
2014.10.28 厚労相がEDV治療薬「アビガン錠」の2万人分備蓄を発表
2014.11.07 国内2人目のEVD疑似症患者(リベリア⇒東京都町田市病院⇒国際医療研究センター)感染研村山庁舎BSL3施設で検体検査(PCR検査 陰性)
2014.11.07 国内3人目のEVD疑似症患者(ギニア国籍)(ギニア⇒関西国際空港⇒りんくう総合医療センター)感染研村山庁舎BSL3施設で検体検査(PCR検査 陰性)2014.11.17 厚労相と武蔵村山市長が感染研村山庁舎BSL4施設稼働の協議推進に合意
2014.12.13 感染研市民セミナー特別編 第一回
2014.12.15 感染研村山庁舎施設運営連絡協議会設置
2014.12.18 感染研市民セミナー特別編 第二回
2014.12.18 感染研市民セミナー特別編 第三回
2014.12.29 国内4人目のEVD疑似症患者(シエラレオネ⇒東京都自宅⇒国際医療研究センター)感染研村山庁舎BSL3施設で検体検査(PCR検査 陰性)
2015.01.18 国内5人目のEVD疑似症患者(シエラレオネ⇒東京都自宅⇒国際医療研究センター)感染研村山庁舎BSL3施設で検体検査(PCR検査 陰性)
2015.01.20 第一回感染研村山庁舎施設運営連絡協議会
2015.02.17 第二回感染研村山庁舎施設運営連絡協議会
2015.03.16 国内6人目のEVD疑似症患者(リベリア⇒東京都自宅⇒国際医療研究センター)感染研村山庁舎BSL3施設で検体検査(PCR検査 陰性)
2015.03.17 第三回感染研村山庁舎施設運営連絡協議会
2015.04.09 雷塚自治会が「感染研村山庁舎のBSL-4についての要望書」を武蔵村山市長に提出
2015.04.17 日本政府がギニアにエボラ迅速検査キットを供与
2015.05.16 第一回感染研村山庁舎BSL4施設見学会
2015.05.18 国内7人目のEVD疑似症患者(ギニア⇒福岡県自宅⇒福岡東医療センター)感染研村山庁舎BSL3施設で検体検査(PCR検査 陰性)
2015.05.30 第二回感染研村山庁舎BSL4施設見学会
2015.06.05 第四回感染研村山庁舎施設運営連絡協議会 
2015.06.27 第三回感染研村山庁舎BSL4施設見学会
2015.06.30 雷塚自治会提出の「感染研村山庁舎のBSL-4実験施設に関する陳情」に対して、武蔵村山市議会が「継続審査」を議決
2015.07.01 国内8人目のEVD疑似症患者(ギニア⇒静岡県自宅⇒静岡病院)感染研村山庁舎BSL3施設で検体検査(PCR検査 陰性)
2015.07.16 国内9人目のEVD疑似症患者(ギニア国籍)(ギニア⇒成田空港⇒成田赤十字病院)感染研村山庁舎BSL3施設で検体検査(PCR検査 陰性)
2015.07.16 第五回感染研村山庁舎施設運営連絡協議会
2015.07.18 第四回感染研村山庁舎BSL4施設見学会

2015.07.31 EVDワクチンrVSV-ZEBOVの臨床試験で100%の感染予防効果を確認2015.07.31 国連の「エボラ緊急対応ミッション」が終了
2015.08.03 厚労相と武蔵村山市長が感染研村山庁舎BSL4施設の稼働に合意
2015.08.03 厚労省がエボラウイルスなどの病原体輸入の検討を開始
2015.08.07 厚労省が感染研を特定一種病原体等所持者および感染研村山庁舎のBSL4施設を特定一種病原体等所持施設に指定
2015.08.26 東大和市長が情報共有の要請書を武蔵村山市長に提出
2015.09.11 国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議( 第一回)が「国際的に脅威となる感染症対策の強化に関する基本方針」を決定
2015.09.30 雷塚自治会提出の「国立感染症研究所村山庁舎の『BSL4』施設の稼働についての陳情」に対して、武蔵村山市議会が「不採択」を議決
2015.12.29 厚労省がエボラ検疫の強化解除
2016.01.14 WHOがEVD終息を宣言
2016.01.15 シエラレオネでEVD再発生
2016.02.09 国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議(第三回)が「国際的に脅威となる感染症対策の強化に関する基本計画」を決定(地方衛生研究所・検疫所において検体検査を迅速に行う体制を整備)
2016.03.17 WHOがシエラレオネのエボラフリーを宣言
2016.03.18 ギニアでEVD再発生
2016.03.29 WHOがEVD流行に対する「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を解除2016.04.04 リベリアでEVD再発生
2016.06.01 WHOがギニアのエボラフリーを宣言

2016.06.01 WHOがギニアのエボラフリーを宣言
2016.06.09 WHOがリベリアのエボラフリーを宣言

2016.06.29 厚労省が「ウイルス性出血熱への行政対応の手引き」を公開
2016.11.17 国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議(第五回)が 「長崎大学の高度安全実験施設(BSL4施設)整備に係る国の関与について」を決定(国策として支援)
2016.12.23 WHOがEVDワクチンrVSV-ZEBOVの効能を最終的に確認
2017.02.17 感染症研究拠点の形成に関する検討委員会(第二回)が検討結果報告書「高度安全実験施設(BSL4施設)を中核とした感染症研究拠点の形成について」を公表
2017.04.22 コンゴ民主共和国(旧ザイール)でEVD発生
2017.07.02 WHOがコンゴ民主共和国のEVD終息を宣言
2017.09         長崎大が「感染症研究拠点の中核となる高度安全実験(BSL-4)施設の基本構想」を策定
2017.09.29 長崎大が高度安全実験施設の設計業務を日建設計と契約
2018.05.08 WHOがコンゴ民主共和国のEVD発生を公表
2018.07.24 WHOがコンゴ民主共和国のEVD終息を宣言
2018.08.01 コンゴ民主共和国保健省とWHOが北キブ州でのEVD流行を宣言

2018.11.15 感染研がBSL4ウイルス(エボラ出血熱、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病、南米出血熱)輸入の意向を表明
2018.11.16 「BSL4施設計画の差し止めを求める会」と長崎大周辺住民長崎大のBSL4施設計画内容の情報開示を求めて、長崎大と長崎県及び同市を長崎地裁に提訴

2018.12.26 長崎大がBSL4 施設の工事契約を戸田建設と締結(2019.01.28 着工)
2019.01.22 長崎大周辺住民が長崎大のBSL4施設計画差止め仮処分を求めて、長崎大を長崎地裁に提訴
2019.06.11 WHOがウガンダ共和国でのEVD患者確認を発表
2019.07.05 厚労省がBSL4ウイルス(エボラ出血熱、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病、南米出血熱)輸入を決定(輸入時期や相手国は非公表)
2019.07.17 WHOがコンゴ民主共和国のEVD発生状況に対して「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言(ステファン緊急委委員長は「現時点では国際的な脅威にはなっていない」と指摘)
2019.08.04 国内10人目のEVD疑似症患者(コンゴ民主共和国に半年以上にわたって仕事で滞在した埼玉県の70代女性、7月31日に帰国、8月3日に38度以上の発熱、4日未明から東京都内の医療機関に隔離入院)の検体検査(BSL3施設でのPCR法)が感染研村山庁舎で行われ、確定診断結果は陰性
2019.08.13 WHOがエボラ治療薬2種類(REGN-EB3, mAb114)に「有効」(致死率半減)の判断
2019.09.21 WHOがタンザニア国内でのEVDによる死亡疑い例の発生(非公式情報)を発表

2019.09.27   感染研がBSL4ウイルス(エボラ出血熱、ラッサ熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病、南米出血熱)の輸入と感染研村山庁舎BSL4施設での保管を公表

2019.10.07 「BSL4施設計画の差し止めを求める会」と長崎大周辺住民が長崎大のBSL4施設計画内容の情報開示を求めた裁判で、長崎地方裁判所は情報開示請求を棄却
2019.11.06 感染研が輸入BSL4ウイルスを用いた研究計画を提示
2019.12.05 東大医科研が人工的に合成した無毒化エボラウイルスを用いて作成したエボラワクチンの臨床研究開始を発表
2019.12.12
 長崎大周辺住民が長崎大のBSL4施設計画差止め仮処分を求めた裁判で長崎地方裁判所は差止め仮処分請求を棄却
2021.02.07 コンゴ民主共和国保健省とWHOが北キブ州でのEVD発生を発表

2021.02.14 ギニア共和国保健省とWHOがンゼレコレ州でのEVD発生を発表
2021.05.03 コンゴ民主共和国保健省がEVD終息を宣言
2021.06.19   ギニア共和国保健省がEVD終息を宣言
2021.07.30 長崎大の BSL4施設竣工
2021.08.06 ギニア共和国保健省がンゼレコレ州でのマールブルグ病の発生をWHOに報告
2021.09.16 ギニア共和国保健省がマールブルグ病終息を宣言
2021.10.08 コンゴ民主共和国保健省とWHO(2021.10.10)が北キブ州でのEVD発生を発表
2021.12.16 コンゴ民主共和国保健省が北キブ州でのEVD終息を発表

2022.02.09 英国健康安全保障庁が東イングランドにおけるラッサ熱患者の確認(西アフリカからの旅行者)と発生(2022.02.11)を発表

2022.04   長崎大が「高度感染症研究センター(BSL-4施設)」を開設

2022.04.23   コンゴ民主共和国保健省とWHOが 赤道州でのEVD発生を発表
2022.07.04 コンゴ民主共和国保健省が赤道州でのEVD終息を宣言
2022.07.17 ガーナ共和国政府がアシャンティ州でのマールブルグ病(MVD)発生をWHOに報告

2022.08.21 コンゴ民主共和国保健省が北キヴ州でのEVD発生を発表
2022.09.16 ガーナ保健省がアシャンティ州、サバンナ州、ウェスタン州でのMVD終息を宣言

2022.09.20 ウガンダ保健省がムベンデ県でのEVD発生を宣言

2022.09.27 コンゴ民主共和国保健省が北キブ州でのEVD終息を宣言
2023.01.11 ウガンダ保健省がムベンデ県でのEVD終息を宣言
2023.02.13 赤道ギニア共和国保健省及びWHOアフリカ地域事務所がKie-Ntem県でのMVD発生を発表
2023.03.21 WHOアフリカ地域事務所がタンザニア連合共和国Kagera州でのMVD発生を発表
2023.06.02 タンザニア連合共和国保省がKagera州でのMVD終息を宣言
2023.06.08 WHOが赤道ギニア共和国Kie-Ntem県でのMVD終息を発表
2023.11    感染研がエボラ動物実験に向けた準備に着手
2023.12.18 武蔵村山市当局が「国立感染症研究所村山庁舎の運営等に関する要望書」を厚労大臣と感染研所長に提出

2015年9月武蔵村山市議会での天目石要一郎、籾山敏夫、須藤博各市議による感染研BSL4施設に関する質疑(Q)に対する藤野勝市長と比留間毅浩企画財務部長のサプライズ答弁(A)の要旨を下記に選別記述し、コメント(C)を付記した。質疑応答の詳細は武蔵村山市議会会議録{平成27年9月定例会(第3回)}に記載されている。

Q:市の要望書と厚労相の確認事項に齟齬がある。

A:確認事項の文言は分析していない。

C:合意文言無き合意!

Q:BSL4施設稼働容認の見返りは。

A:稼働容認は金目無しに堂々と行った。見返りは一切求めていない。
C:漏出病原体や有害化学物質による疾病補償は?

Q:市民の理解が得られたとの判断根拠は。

A:感染研見学者のうちアンケート意見記入者の7、8割が安全性を理解した。
C:BSL4施設見学と概要説明による安全性(危険性)の理解は不可能!
施設見学会(3回)の参加者は合計70名で、アンケート意見記入者は38名。安全性理解者は意見記入者の7、8割(~30名)で見学者の半数以下!
A:「感染研村山庁舎施設運営連絡協議会(感染研協議会)」での議論が整理された。
C:反対住民を一切の発言を認めない傍聴席に追いやり、反対住民の疑義を無視した感染研による一方的整理!
A:しののめ自治会と学園自治会が夏祭りに感染研官僚を招待した。

C:上記自治会の感染研協議会委員は30年に及ぶ市民の稼働反対運動を分断!
学園自治会長(感染研協議会委員)は第三回感染研協議会において、感染研協議会委員への「謝金の支払い(収賄)」を感染研に要求!
感染研は第四回感染研協議会において、「謝金の支払い(贈賄)」の決定を感染研協議会委員に回答!

Q:2015年6月市議会で継続審議になった陳情「BSL4施設の稼働停止の継続と移転を求める市の方針の堅持を要請する」や1982年6月市議会での市当局の約束「稼働協定の締結には、厚労省と市当局のほか稼働反対団体を加える」を無視しての市長の独断専行は市議会軽視である。
A:状況が大きく変わった。

C:市議会の事前承認は不要?法的安定性は!
市長の独断専行は独裁市政!

Q:厚生労働大臣確認事項はいつ受理したのか。

A:メモは8月3日、厚労省文書(8月3日付)は8月7日に受理した。

C:市議の一人は厚労省文書(8月3日付)のコピーを8月4日に市当局から入手!メモ=厚労省文書?

C:市議会での市当局の常套答弁「エボラ検体検査が陽性の場合、BSL4施設稼働が必要となる。」は下記の理由により虚偽である。
①海外のEVD治療現場での検体検査に用いられるRT-PCR法は、確定診断でのウイルスの有無、検体検査が陽性の場合の治療支援でのウイルス量の増減、および退院決定のためのウイルスの有無を短時間(数時間)で測定できる。RT-PCR法による検体検査は、検体処理過程の最初にウイルスを不活性化(感染の危険性が消滅)するのでBSL3・BSL2 施設で行える。
 感染研村山庁舎での確定診断も、BSL4施設を使用せずに、BSL3施設において RT-PCR法で行われている。エボラ検体検査が陽性の場合、治療支援や退院決定のための検体検査を RT-PCR法で行えば、BSL4施設の稼働は不要である。
エボラ検体検査が陽性の場合、ウイルス分離法を用いて治療支援や退院決定のための検体検査を行えば、ウイルス感染の危険性があるのでBSL4施設が必要となる。しかし、ウイルス分離法による検体検査は数日(一週間以上)かかるので、一刻を争うエボラウイルス病(EVD)治療現場での有用性に疑問がある。コンゴのEVD患者データの分析では「治療開始が1日遅れると死亡率が11%増加する」ことが示されている。
③エボラ検体検査が陽性の場合、活性ウイルスを用いた BSL4施設での基盤的研究(診断法の研究開発など)やワクチン・治療薬の研究開発を応急的に遂行することは不可能である。ワクチンや治療薬の開発は10年単位の時間と莫大な経費を要する。これらの長期的研究開発を立川断層に近接した人口密集市街地にある老朽化BSL4施設で行うことは危険であるから、研究開発のための最新の設備(スーツ型)を有する強固なBSL4施設を人家と活断層から十分に離れた安全な場所に新設すべきである。
 ちなみに、エボラウイルス病に対して開発が進められているワクチンや治療薬の幾つかは治療現場で試用され有望な結果が報告されているが、カナダ国立微生物学研究所で開発されたワクチンrVSV-ZEBOVは臨床試験で100%の感染予防効果が確認された。

NOTE:
2019年8月13日、WHOがエボラ治療薬2種類(REGN-EB3, mAb114)に「有効」(致死率半減)の判断を行った。


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(12)自衛隊は憲法違反?(2017.12.1)
(11)二酸化炭素温暖化説批判(2017.2.11)
(10)都知事選「ムサシによる不正選挙?」(2016.10.3)
  (9)PCR法「横田めぐみさんの遺骨鑑定」(2016.1.6)
  (8)感染研「731部隊の因縁」(2015.10.31)
  (7)集団的自衛権の違憲性「統治行為論」(2015.10.11)
  (6)育鵬社版社会科教科書「武蔵村山市教育委員会が継続採択」(2015.8.7)
  (5)感染研BSL4施設稼働「武蔵村山市民の誇り?」(2015.8.3)
  (4)長崎大「新たな感染症研究施設に関する説明会」(2015.8.1)
  (3)立川断層異聞(2014.5.11)
  (2)3市(小平、東大和、武蔵村山市)共同資源物処理施設「建設計画」(2013.12.20)
  (1)武蔵村山市の著作権法侵害「転載記事の大幅改変」(2013.9.26)
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(12)自衛隊は憲法違反?(2017年12月1日)

 近年、北朝鮮の核ミサイルによる武力攻撃が日本の米軍基地や原発に対して行われる可能性が想定されている。北朝鮮の武力攻撃に対して、従来の個別的自衛権では、自衛隊による防衛的武力行使が行われるが、安全保障関連法案(安保法)が成立した現在では、自衛隊は集団的自衛権による米軍との合同武力行使(戦争)を行う可能性が高い。

 この際、あらためて、自衛隊の武力行使のあり様が合憲か違憲かを、武力行使(戦争)に係わる憲法の下記規定(前文、9条、および13条)に基づいて考察する。

●憲法前文

「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」

「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」

「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」

●憲法9条

「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」

●憲法13条

「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」

 日本への武力攻撃に対しては、憲法前文「国民の生存の権利」と憲法13条「国民の生命の尊重」の規定によって、国民の生命を守るための緊急避難的正当防衛としての自衛隊による防衛的武力行使(個別的自衛権)が行われる。これは、国際紛争の開始であって、「国際紛争を解決する手段」ではないから、憲法9条の規定「武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては放棄する」に違反しない。

 また、憲法9条②項は、前項の目的「国際紛争を解決する手段としての武力行使の永久放棄」を達成するための規定(芦田修正)であるから、「国際紛争を解決する手段」ではない個別的自衛権(防衛的武力行使)は②項の交戦権に該当しないし、「国際紛争を解決する手段」ではない防衛的武力(個別的自衛権)を行使する自衛隊は②項の戦力に当たらない。従って、自衛隊による防衛的武力行使である個別的自衛権は合憲である。


 他方、防衛的武力行使を超える「国際紛争を解決する手段」としての自衛隊の武力行使(戦争)や集団的自衛権の行使は、9条の規定に違反するから、憲法違反である。


 憲法改正によって、「国際紛争を解決する手段」としての自衛隊の武力行使(戦争)が可能になったとしても、原発が林立する狭い日本国土に対する核ミサイルによる武力攻撃を防御することは不可能である。

 したがって、日本国民の「生存を保持」するためには、日本領土への核ミサイル攻撃が行われることがないように、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」、平和外交による国際的友好関係を推進すること、憲法の規定を遵守して「国際紛争を解決する手段」としての自衛隊の武力行使(戦争)は行わないこと、日本の米軍基地の返還を実現すること、そして、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」した日本国憲法が最高の戦争抑止力であることを肝に銘ずることである。


(芦田修正)

 9条②項の規定「前項の目的を達するため」は、芦田均氏を委員長とする衆議院帝国憲法改正小委員会で修正案として持ち出され、成立したので芦田修正と言われる。芦田氏は、昭和32(1957)年12月5日、内閣に設けられた憲法調査会で、次のように証言している。
 
「私は一つの含蓄をもってこの修正を提案したのであります。『前項の目的を達するため』を挿入することによって原案では無条件に戦力を保持しないとあったものが一定の条件の下に武力を持たないということになります。日本は無条件に武力を捨てるのではないということは明白であります。そうするとこの修正によって原案は本質的に影響されるのであって、したがって、この修正があっても第9条の内容には変化がないという議論は明らかに誤りであります。」

(11)二酸化炭素温暖化説批判(2017年2月11日)

 産業革命以後、地球平均気温は上下変動しながら上昇し、地球は温暖化した。IPCCは二酸化炭素の増加による気候変動をコンピュータ・シミュレーションによって解析し、人為的排出による二酸化炭素の増加によって将来(100年程度)のさらなる地球温暖化の進行を警告している。シミュレーションは、二酸化炭素による温暖化を定量的に説明するための定性的気候モデルを構築し、過去の平均気温の変動を再現すべく気候モデルの適合パラメータをチューニングして行われる。

 IPCCの温暖化予測に対しては様々な批判(懐疑論)がある。二酸化炭素温暖化説に対する下記コメント①は地球放射赤外線(地球放射)の二酸化炭素による放射吸収過程に対する疑義であり、②は地球放射の二酸化炭素による吸収飽和の否定に対する疑義である。

① 地球放射は、二酸化炭素の変角振動励起により波長15µm近傍の遠赤外線が吸収される。対流圏では、振動励起状態は、気体分子(窒素・酸素)との衝突により基底状態へ失活する確率が赤外線の自然放射によって失活する確率に比べて圧倒的に大きいので、二酸化炭素の振動励起エネルギーは分子運動(並進、回転)エネルギーに分配される。その結果、気体温度が上昇(温暖化)し、大気全体の温度分布は熱伝導・対流によってバランスする。二酸化炭素は大気温度に対応した赤外線の平衡放射吸収(熱放射)を行う。地表面近傍の大気温度に対応して下向きに放射された赤外線は地表面に吸収される。
 高層大気においても二酸化炭素は大気温度に対応した熱放射を行うが、高度とともに二酸化炭素が徐々に希薄になるため、上向きに放射された赤外線は次第に吸収を免れて大気圏外へと放出される。二酸化炭素は成層圏下層まで達するので、成層圏下層から(水蒸気は対流圏中層まで存在できるので、対流圏中層から)赤外線を大気圏外へ放出する(人工衛星ニンパス4号の測定結果)。
 二酸化炭素温暖化説では、二酸化炭素による地球放射の放射吸収過程が次のように説明される: 「二酸化炭素に吸収された地球放射はそのまま再放射(自然放射)され、地表面や二酸化炭素によって吸収され再放射される。この放射吸収過程が繰り返され、地球表面温度が上昇(温暖化)する。」
 しかし、二酸化炭素温暖化説の赤外線放射吸収過程は、分子間衝突による二酸化炭素の振動励起状態の失活が無視されているので、対流圏では物理的にあり得ない。

②現在の二酸化炭素濃度(400ppm)よりも小さい産業革命以前の濃度(280ppm)でも、赤外線波長15µm近傍の地球放射は、二酸化炭素によって海抜10mで99%以上、対流圏下層で100%吸収(飽和)されることが明らかにされている。従って、二酸化炭素濃度が倍増しても、対流圏下層での地球放射吸収量(100%)は増加しない。
 二酸化炭素温暖化説は地球放射の吸収飽和に矛盾するので、次のような反論が提起されている(地球温暖化懐疑論批判 IR3S/TIGS叢書No.1): 「気体分子の吸収線は、圧力効果とドップラー効果と呼ばれる2つの効果によって波数方向に幅を持っており、特に、吸収線の中心で吸収が飽和しても、さらに気体濃度が増えると、吸収線の幅が広がることにより吸収量が増加することが分かっている。従って、これらの波長帯では大気全層の1回の吸収さえも未飽和であり、二酸化炭素の増加によって吸収量が増加することはさらに自明である。」
 しかし、ドップラー効果による吸収線幅の広がりは二酸化炭素の濃度に無関係であり、また、圧力効果による吸収線幅の広がりは気体分子の増加によるものであり、二酸化炭素の濃度が倍増しても気体分子は0.04%程度しか増えないので、二酸化炭素濃度の増加による吸収線幅の広がりは軽微である。さらに、二酸化炭素の赤外線吸収領域の両端は水蒸気の赤外線吸収領域と重なっており、二酸化炭素の増加による吸収量の軽微な増加を過大評価して対流圏下層での吸収飽和を否定するのは困難である。
 地球放射の吸収飽和を考慮せずに構築されたIPCCの気候モデルでは、二酸化炭素濃度が増加すれば赤外線吸収量も(飽和せずに)増加するので、コンピュータ・シミュレーションは二酸化炭素温暖化説に沿う結果をもたらすのは当然である。

 産業革命以後、大気中の二酸化炭素は増加しているが、二酸化炭素の赤外線吸収飽和によって地球放射の吸収量は増加しないから、二酸化炭素温暖化説は否定される。従って、産業革命以降の地球温暖化は太陽などによる自然現象が原因であると考えざるを得ない(地球温暖化懐疑論)。現在は10万年(ミランコビッチ)サイクルの温暖な間氷期にあるが、過去の記録を見ると間氷期は1-2万年以内に氷河期に突入する。現在、すでに1万年を経過しており、いつ氷河期に入ってもおかしくないので、二酸化炭素温暖化説に沿って氷河期突入を回避したい想いもある。とは言え、二酸化炭素温暖化説が福島原発事故後もなお原発(再稼働)推進の口実に利用されるのは残念である。

(10)都知事選「ムサシによる不正選挙?」(2016年10月3日)

 平成26年(H26)とH24に行われた都知事選の当選者である舛添氏と猪瀬氏の選挙区得票分布(=選挙区得票数/全選挙区得票数)のあり得ないほど良好な一致は、選挙機器「ムサシ」による不正選挙の証拠であると取り沙汰されている。当選者の得票数が「ムサシ」によって改竄されれば、「ムサシ」を使用しない選挙区もあるので、選挙区得票分布に不自然な変動が生じる可能性がある。選挙区得票分布の変動を検証するために、入手可能な選管の公表データを用いて、都知事選での当選者の選挙区得票分布と選挙区有権者分布(=選挙区有権者数/全選挙区有権者数)との比較を行った。

 図1-6および図8は、H11(石原)、H15(石原)、H19(石原)、H23(石原)、H24(猪瀬)、H26(舛添)、およびH28(小池)の都知事選での当選者の選挙区得票分布と選挙区有権者分布との比較を示す。人口2万人以下の町村部を除いて、選挙区得票分布と選挙区有権者分布は、「ムサシ」の本格的導入(H26)以前でも良好な一致が見られ、当選候補者に対する都民の投票行動に顕著な地域差がないことが分かる(マスコミの洗脳?)。また、「ムサシ」の導入が開始されたH13以降の当選者の選挙区得票分布と選挙区有権者分布との一致に不自然な変動は見られない。
 舛添氏(H26)と猪瀬氏(H24)の選挙区得票分布の比較を図7に示す。両氏の選挙区得票分布の一致は、当選候補者に対する都民の投票行動に地域差がないこと、およびH26とH24の選挙区有権者分布に変動がないことから説明できるので、舛添氏と猪瀬氏の選挙区得票分布の一致を「ムサシ」による不正選挙の証拠とするのは無理がある。

 今年(H28)7月に行われた都知事選における2位の増田氏と3位の鳥越氏の選挙区得票分布と選挙区有権者分布との比較を図9と図10に示す。増田氏の選挙区得票分布と選挙区有権者分布との一致は1位の小池氏(図8)と同様に良好であり、不自然な変動は見られない。なお、与党推薦候補である増田氏の落選によって、都知事選での「ムサシ」による得票数の改竄疑惑は否定されると思われる。
 野党推薦候補である鳥越氏の選挙区得票分布は、得票数が少ないこともあり、選挙区有権者分布からのずれの程度は上位2人に比べて幾分大きい。



図1


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図3
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図5
図6
図7
図8
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図10




(9)PCR法「横田めぐみさんの遺骨鑑定」 (2016年1月6日)
 

 2016年1月6日午前10時30分に北朝鮮が水爆実験を敢行したとのニュースに驚いた。早速図書館に行って、蓮池透氏(拉致被害者家族連絡会元事務局長)の著書数冊をまとめて読んでみた。そこに、北朝鮮が横田めぐみさんの死亡証拠として提供した遺骨の鑑定結果に対する疑念が記述されていた北朝鮮の弁明「1200℃の高温で焼いた遺骨なので、鑑定は不可能」にもかかわらず、政府代表団が遺骨を死亡証拠として受理した(2004年11月14日)ことに違和感を覚えた。その後、日本政府は遺骨のDNA鑑定に基づき「遺骨は横田めぐみさんのものではない」と公式発表した(2004年12月8日)。

 DNA鑑定はnested PCR 法によって行われたが、昨年感染研でエボラウイルス病の確定診断のための検体検査がPCR (RT-PCR)法によって行われたこともあり、PCR 法による焼却遺骨のDNA鑑定に興味が湧き、当時の資料を調べてみた。
 遺骨のDNA鑑定は科学警察研究所と帝京大学法医学教室の吉井富夫講師によって行われた。科学警察研究所では1200℃で焼却された核DNAの抽出が困難で「鑑定不能」とされた。吉井氏はごく微量のDNAが検出可能なnested PCR 法を用いて2種のミトコンドリアDNA を検出したが、そのいずれも横田めぐみさんの臍の緒から抽出したDNAと一致しなかった。日本政府は吉井氏の鑑定結果から「遺骨は偽物」と結論した。
 北朝鮮は1200℃で焼いた骨にDNAが残存するはずはなく、鑑定結果は捏造であると反論した。北朝鮮が横田めぐみさんの死亡証拠として焼却遺骨を提供した意図は不明であるが、吉井鑑定が日朝関係を険悪化させ、拉致問題解決の障害になったことは残念である。

 英科学誌Natureや国内外の研究者も焼却遺骨のDNA鑑定に対する科学的問題点や政治的疑惑を指摘した。これらは国際的に重大な問題にもかかわらず未だ解明されていないので、下記にまとめて記載する。

①世界の科学者の知見では1200℃で焼却された遺骨のDNA鑑定は不可能であり、「遺骨は横田めぐみさんのものではない」とは断定できない。
②nested PCR法は通常のPCR法に比べて高感度であり、ごく微量の汚染DNA(コンタミネーション)を検出する危険性が大きいので、nested PCR法によるDNA鑑定はコンタミネーションを否定できる根拠の明示が要求される。吉井氏も英科学誌Natureのインタビューを受けてコンタミネーションの可能性を認めている。
③英科学誌Natureは「ニセ遺骨と主張する日本政府は、鑑定が確実だとする証拠を提出するか、鑑定は確実ではなかったと認めなくてはならない」と指摘している。
④吉井鑑定は、日本DNA多型学会DNA鑑定検討委員会の「DNA鑑定についての指針(1997)」が求めている「再鑑定のための資料の保存」「保存が不可能な場合は、客観的に説明できる詳細に記録した鑑定ノートの開示」「コンタミネーションを否定できる根拠の明示」などのDNA鑑定基準を満たしていない。
⑤吉井氏は、英科学誌Natureのインタビュー後、科学捜査研究所の法医科長に抜擢され、鑑定遺骨も使い切ったため残っていないとして一切の説明責任を回避している。
⑥日本政府が国家的に重大な遺骨鑑定を、吉井氏と科学警察研究所などとの共同研究チームではなく、焼却遺骨鑑定未経験の単独研究者である吉井氏に託したのは不可解である。
 
(8)感染研「731部隊の因縁」(2015年10月31日)

 感染研村山庁舎のBSL4施設の強行稼働を契機に、細菌戦部隊として人権を踏みにじった関東軍731部隊についての資料「悪魔の飽食(森村誠一著)」などを読み始めたところ、折よく「731部隊の国家犯罪を裁く」ビデオ学習会(731部隊員の証言)が2015年10月31日に「なかのZERO」で開催されたので参加した。

 731部隊は中国のハルビン郊外の平房で細菌兵器の開発や治療法の研究などのために、「マルタ(丸太)」と呼ばれた多くの中国人やロシア人などを人体実験により虐殺し、さらに細菌作戦によって多数の中国人を殺戮した。これらの犯罪は、ソ連、中国、および米国の尋問調書・調査資料、731部隊作成(関連)資料、元731部隊関係者の供述書・証言や中国人被害者の証言などから明らかになっている。学習会で証言ビデオや講演を聴講して、今さらながら悲しみと憤りを覚えた。

 資料を調べるうちに、日本に持ち帰った731部隊研究資料を米国へ全面提供する見返りとして、同部隊関係者が戦犯免責されたこと、予研(1947年設置)の歴代所長・副所長を含む多くの研究者が元731部隊関係者であったこと、予研戸山庁舎の建設時(1989年)に旧陸軍軍医学校(731部隊は軍医学校防疫研究室の下部組織)跡地から人体標本と思われる加工跡や実験跡が残る人骨が多数発掘されたが、731部隊との関連が未解明のまま戸山庁舎敷地内に保管されていることなど、予研と731部隊との深い因縁を知った。

 内部告白本「科学者として(新井秀雄著)」と同書に掲載されている「予研=感染研の反公共的・反国民的所業についての年表(芝田進午編)」を読んで、非加熱血液製剤による薬害エイズ事件(1982-85年)の責任転嫁、予研=感染研裁判での米国人査察報告書の署名偽造など予研=感染研の人権無視の歴史に強い衝撃を受けた。

 予研=感染研は武蔵村山市民に一切のリスク説明をせずに1981年に予研村山分室にP4施設を建設し、30年に及ぶ市民の稼働反対運動を無視した市長の独断専行を利用して2015年8月にBSL4(P4)施設の稼働を開始した。稼働反対住民を巧妙な手口で排除・分断して行ったBSL4施設の強行稼働も予研=感染研の人権無視の一環に過ぎないことに思い至り慄然とする。

 

(7)集団的自衛権の違憲性「統治行為論」(2015年10月11日)


 2015年10月11日東村山市民センターで広渡清吾氏による安保法制緊急学習会「安保法制のどこが問題なのか、これから何ができるのか」(主催 NO!安保法制 東村山議員の会)が開催された。「自衛権」と「他衛権」、砂川判決の文言「一見してきわめて明白に違憲無効」などの知識を得た。講演を聴講しながら考察した集団的自衛権の違憲性について以下に要約する。

①憲法九条の認めない「交戦権」は、(国側の)定義によると、「戦いを交える権利ではなく、国際法上有する種々の権利の総称」である。従って、国連憲章51条の個別的・集団的自衛権は「交戦権」である。
②日本固有の(個別的)自衛権の行使(日本を防衛するための必要最小限度の武力行使~正当防衛)は、国際法上の「交戦権」の行使(日本防衛のための必要最小限度を超える武力行使の容認~過剰防衛)とは別の概念であり、憲法九条に違反しないとする(国側の)従来の解釈を了解する。
③安保法制の集団的自衛権は、従来の日本固有の自衛権を超える武力の行使を容認するから、憲法九条の禁止する「交戦権」であり、違憲である。
④原発の林立する狭い国土での防衛戦争(本土決戦)は、日本の滅亡(一億総玉砕)以外の何物でもないから、如何なる戦争も絶対にしてはならない。

 2015年11月5日には「わたしたちに基地も戦争もいらない―砂川闘争60周年のつどい」が立川市市民会館で開催された。60年前の熱き平和への思いが、辺野古基地・安保法制・砂川事件最高裁判決の反対運動へバトンタッチされた。砂川闘争のおかげで米軍立川基地が横田基地に移転して、米軍輸送機の飛行コース直下に住む武蔵村山市民は離着陸騒音被害を免れた。とは言え、安保法制の成立に呼応して2017年から米軍横田基地に配備されるCV22オスプレイの騒音と事故に対する不安が心をよぎる。  

 米軍駐留の違憲性が問われた砂川事件の最高裁判決(1959年12月16日)「日米安全保障条約のように高度な政治性をもつ条約については、一見してきわめて明白に違憲無効と認められない限り、その内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできない」(統治行為論)は、米軍機騒音に対する「第三者行為論」、原発に対する「裁量行為論」などとしてその後の裁判に悪用されることとなった。政府に対する憲法のコントロール不全に起因する国民の意思と人権を無視する政治は、日本社会の最大の欠点とされる。
 2015年9月19日に参院本会議で可決された安保関連法は多数の国民が反対し、集団的自衛権の違憲性が問われているが、最高裁は「統治行為論」によって憲法判断を避けることが想定されるので、以下に最高裁の憲法判断回避に対する疑義を記しておきたい。

①多数の国民による集団的自衛権の違憲判断に対して、最高裁が憲法判断の権限を放棄することは、憲法81条「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」に違反する。
②砂川判決は「終局的には、(違憲判断は)主権を有する国民の政治的判断に委ねられるべき」としており、憲法9条の下での集団的自衛権行使は「一見してきわめて明白に違憲無効」であると多数の国民が認める場合、最高裁は違憲の法的判断を回避できない。
③1960年6月23日発効の新安保条約5条「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危機に対処するように行動する」における「(武力)行動」は、憲法上の法的判断を想定しているから、最高裁は憲法判断を回避できない。
④集団的自衛権の行使においては、国会承認はもとより違憲判断のために必要な「他国」からの情報などが特定秘密保護法に基づく「特定秘密」に指定され、「一見してきわめて明白に違憲無効」との法的判断が困難となり、事実上「統治行為論」がまかり通ることが想定される。
⑤最高裁による「統治行為論」の弊害を除くには、政府から完全に独立して違憲判断を下せる憲法裁判所の設置が考えられるが、憲法改正が必要となるので非現実的である。

(6)育鵬社版社会科教科書「武蔵村山市教育委員会が継続採択」(2015年8月7日)

 武蔵村山市教育委員会は2015年8月7日の臨時会で、来春から四年間市立中学校で使用する歴史と公民の教科書に、四年前に引き続き育鵬社版を採択した。育鵬社版は日本教育再生機構のメンバーらが執筆した教科書で、教育再生首長会議のメンバーである市長と教育長(教育再生首長会議に同行)の意向を忖度した全員一致による採択が予想されたが、教育長と教育委員の計五人のうち三人が育鵬社版、一人が東京書籍版、もう一人は両版を推した。なお、当日傍聴と抗議に駆け付けた市民116人のうち傍聴を許されたのは45人であった。
 東京では東京都教育委員会(都立中高一貫校、都立特別支援学校の中学部)のほか武蔵村山市と小笠原村の教育委員会が育鵬社版を採択した。折りから国会では戦争法案の論戦が行われており、原発が林立した狭い国土での防衛戦争(本土決戦)は日本の滅亡以外の何物でもないから、戦争は絶対にしてはならないことを学べる社会科教科書の採択を期待したが、叶わなかった。ちなみに、育鵬社版を継続採択した武蔵村山市は「非核平和都市宣言(1984年8月6日)」自治体である。

 武蔵村山市立図書館に中学社会科教科書が整備されていなかったので、市民の読み比べができるよう全出版社の教科書の購入整備を要望したところ、2015年10月に教育委員会所有の歴史教科書(2015年検定済)が図書館へ寄贈された。早速読み比べてみたが、日本文教出版と東京書籍の歴史教科書は、各ページに掲載されている簡便な年表によって、そのページの記述がどの時代のものかを確認しながら学べるので、記述の的確さと共に中学生の歴史理解力の増進に優れる印象を受けた。

 現行の教科書採択制度は様々な問題点が指摘されているが、文部科学省は教科書会社(12社)が教員ら(5157人)に検定中の教科書を見せ、謝礼を渡すなどの不正行為を行ったことを公表した(2016年1月22日)。その後、育鵬社が教科書の「採択権限」を持つ教育長(6人)に検定中の教科書を閲覧させたことが発覚し、文部科学省は採択の公正性に疑念を持たれる行為だとして調査していることが報道された(2016年2月22日)。さらに、昨年七月の中学公民教科書採択で育鵬社版を選んだ大阪府東大阪市教育委員会の委員長を務めていた乾公昨氏が、採択前に育鵬社社員と接触していたことも明らかになっている。

(5)感染研BSL4施設稼働「武蔵村山市民の誇り?」(2015年8月3日)

 2015年8月3日の感染研村山庁舎のBSL4施設稼働に関する武蔵村山市長との会談で厚労相は「武蔵村山市民にとっても、日本にとっても、誇りになるよう、努めていく」と発言した。「市民の誇り」とは、首都直下地震が切迫した立川断層に近接した人口密集地にある老朽化BSL4施設の危険性をものともせず「稼働は日本のためにやむを得ない」とする犠牲的精神、または見返りなしのNIMBY施設の誇示、それとも両者であろうか。ちなみに、エボラウイルス病の確定診断と治療支援は、迅速に正確な検査ができるRT-PCR法を用いればBSL3・BSL2施設で実施可能であり、BSL4施設の稼働は不要である。
 30年以上市長や市議会と共にBSL4施設の稼働停止と移転を求めてきた地元住民としては、感染研村山庁舎周辺に日本で唯一のバイオハザード危険地帯のレッテルが貼られる風評被害やバイオ施設安全神話の破綻によるバイオハザードの発生によって、「市民の誇り」が腰砕けに終わらないことを願うばかりである。

(4)長崎大「新たな感染症研究施設に関する説明会」(2015年8月1日)

 2015年8月1日に行われた長崎大BSL4施設に関する説明会での質疑応答を長崎大HPから転載する。
 <回答4>については 「長崎大学が進めるBSL4施設設置計画の白紙撤回を求める『市民と科学者となかまたち』のブログ」
http://bsl4731.exblog.jp/21543270 を参照されたい。
 <回答5> から、8月3日の武蔵村山市長と厚労相との会談以前に、感染研BSL4施設の稼働と役割分担などの情報を長崎大が把握していたことが分かる。
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 市民の皆様との主な質疑を記しておきますのでご参照ください。
<質問1> 有識者会議の報告をもって設置するのか?
<回答1> 「論点整理」をもって、住民のコンセンサスを得られたとは思っていない。
<質問2> 反対している自治会もたくさんある。建設をストップしていただきたい。

<回答2> 地域のみなさまの理解が得られるよう努力したい。
<質問3> 来年度の予算要求について教えていただきたい。
<回答3> 基本構想の立案経費を要求する考え。施設・設備の仕様、図面等、海外の施設の視察等も行いながら具体化し、それを提示することでさらなる理解を獲得したい。危機管理の具体的なマニュアル作成など、次の予算を使って、具体的に議論できる準備をしたい。住民の皆様との意見交換の経費等も計上する考え。
<質問4> 大学は、BSL-4施設は診断に必要と説明していたが、簡易迅速診断法を使えば、BSL-4施設以外でもできるのでは?
<回答4> これまでも説明してきた通り、「簡易診断」はできるが、最終的な確定診断には、患者の体内から感染性のあるウイルスを分離する作業が必要になる。BSL-4ウイルスへの感染確認後は施設がないと十分な治療ができない。 
<質問5> 武蔵村山にある感染症研究所のBSL-4施設が稼働すれば十分ではないか?
 <回答5> 感染研は診断が中心、長崎大学では人材育成とワクチンや治療薬等の開発、研究が中心で、異なる役割を担うことになる。
<質問6> 有識者会議を傍聴することができなかった。なぜ、秘密にするのか。
<回答6> 委員のなかから、忌憚のない意見交換をするために討論部分は非公開としてほしいとする希望があった。
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(3)立川断層異聞(2014年5月11日)

 感染研村山庁舎に近接した立川断層帯は、名栗断層と立川断層から構成され、埼玉県飯能市から東京都青梅市、武蔵村山市、立川市を経て府中市に至る長さ33kmの断層帯で、大まかな位置が分かっている。立川断層帯は1万5千-1万年に1回動き、最新活動時期は2万-1万3千年前(活断層)で、平均的な上下方向のずれの速度は千年に0.2-0.3m程度と推定され、近い将来、マグニチュード7.4、震度6強~7程度の地震が発生し、その際に北東側が相対的に2-3m程度高まるたわみや段差が生じることが予測されている。
 今後30年間に立川断層地震が発生する確率は、0.5-2%と推定されているが、2011年の東北地方太平洋沖地震に伴い、地震発生確率がより高くなっている可能性がある。地震調査委員会は2004年、南関東の全域のM7級の地震が起こる確率は30年以内に70%程度と予測した。東電が活断層ではないとした福島県浜通りの湯ノ岳断層、および井戸沢断層、塩ノ平断層が東北地方太平洋沖地震に連動した例もあり、首都直下地震で立川断層が動く可能性も否定できない。

 東京大学地震研究所などの研究チーム(研究代表者:佐藤比呂志)は、2012年度から3年計画で立川断層帯の重点的な調査観測を行い、2013年2月に武蔵村山市の日産自動車跡地で榎トレンチを一般公開した。その際、凝灰岩とみられる石が垂直方向に並んでいることから「活断層を発見した。水平方向に動く横ずれの可能性がある。」と発表した。ところが、見学者から「岩石のような塊はコンクリートではないか。」との指摘があり、さらに数メートル掘り進めたところ、地層のずれや石の動きとみられていた痕跡が途絶えたことなどから「活断層ではない。」と判断を修正した。多額の国費を投入したお粗末な調査観測に唖然とする。
 なお、本件に関して、文部科学省は「『立川断層帯における重点的な調査観測事業』における問題の調査結果及びこれに対する改善事項」において、「本事業は国の委託調査であり、その結果は単に研究者の見解に留まらず、国としての判断の元となることから極めて高い信頼性が求められる。そのため、調査を行う際、綿密に計画を立て、円滑に遂行するということは当然であり、加えて、本件のような国民の関心が高い事業においては、その研究成果を正確かつ丁寧に説明することが特に重要となる。」さらに「本事業のみならず、他の活断層に関する調査事業においても、これらの点を踏まえ、国民の期待に応えられるよう真摯な態度で調査に臨むことを求めるものである。」との要請を行っている。
 2014年5月11日の報道によれば、同研究チームが2013年12月に瑞穂町の小高い丘にある狭山神社の敷地内で長さ6m、深さ2-3mの溝を掘ったところ、はっきりとした断層が見つかり、放射性炭素による地層年代測定から数百年前に地震が起きたこと、さらに、過去1万年以内に少なくとも1回以上の地震があったことが分かった。これらの結果は地震調査委員会の予測を覆し、今後30年間の立川断層地震の発生確率が小さくなる可能性があるが、調査結果は精査が必要であり、立川断層と連動する可能性がある名栗断層も含めた総合的な調査を待って最終的な結論を出すとしている。 
 本調査観測の結論で驚くのは、立川市の断層がなくなり(武蔵村山市の断層は残存)、従来の立川断層を「箱根ヶ崎断層」と新称することである。報告書に「活断層としての断層の特徴を抽出するため、浅層高分解能に集中した反射法地震探査を実施した。このため、当初計画していた震源断層の形状を拘束するための深部反射法地震探査が実施できなかった。関東平野には厚い新第三系が分布しており、伏在する活断層について、より地下構造についての資料を充実させていく必要がある。」と弁解しているように、過去に行われた反射法地震探査が示す地下深部に伏在する活断層の存在は否定できない。また、狭山神社の小高い丘における深さ2-3mの地下浅部での断層調査において、立川断層に直結しない地割れや地滑りなどの可能性が精査されたのであろうか。立川断層近辺の住民に大きな影響を及ぼす調査結果は、榎トレンチの例もあるので、地下深部に伏在する可能性のある活断層を精査してから公表すべきである。
 なお、地震調査研究推進本部事務局によると、上記研究チームとは独立に2015年度に立川断層の再調査が行われ、2016年末か2017年初めには専門家による総合的な再評価の結果が公表される予定である。
 
(2)3市(小平、東大和、武蔵村山市)共同資源物処理施設「建設計画」(2013年12月20日)

  3市(小平、東大和、武蔵村山市)共同資源物処理施設を東大和市暫定リサイクル施設(東大和市想定地)に建設する計画が進められている。廃プラ中間処理施設では劣化が進行する廃プラの保管や圧縮・破砕・摩擦によって有毒なVOC(揮発性有機化合物)が発生し、杉並病や寝屋川病で知られる施設周辺住民の化学物質過敏症(CS)などの健康被害が問題になっている。VOC規制は浮遊粒子状物質および光化学オキシダント対策の一環として開始されたもので、CSに配慮した規制ではない。そのため、100種類以上あるVOCのうち規制対象VOCは10種類程度で、未知化学物質を含む大多数のVOCは規制対象外であり、活性炭と光触媒法による最新のVOC除去システムによって規制対象VOC濃度が規制値を下回っても、健康被害が発生する可能性は否定できない。



 東大和市想定地周辺は、近年のマンション建設ラッシュで人口密集地になり、マンションや総合スーパーなどの高層ビル群によってVOCの拡散が阻害され、汚染空気が淀みやすい環境になっている。全ての住民の健康と暮らしを守る責務がある自治体は、高コストで廃プラ公害リスクのある公的集中処理計画を撤回して、コストが最少で廃プラ処理量が少なく健康被害のリスクも小さい従来の各市分散処理の継続または3市衛生組合焼却炉での直接焼却を選択すべきである。ちなみに、2013年11月に武蔵村山市議会に提出した「3市共同資源物処理施設の東大和市想定地での建設計画中止に関する陳情」は同年12月20日の市議会で不採択とされた。
 

 3市衛生組合計画による3市共同資源物処理施設での3市廃プラ処理量は年間4500tであり、2012年度の各市廃プラ{ペットボトル、プラスチック製容器包装(容器包装プラ)}処理実績は以下の通りである。
 小平市=ペットボトル600tと硬質容器包装プラ500tを小平市リサイクルセンターで中間処理し、軟質(フイルム系)容器包装プラ1400tを3市衛生組合焼却炉で直接焼却。
 東大和市=ペットボトル300tを東大和市暫定リサイクル施設で中間処理し、容器包装プラ900tを武蔵村山市内の民間施設で中間処理。
 武蔵村山市=ペットボトル200tを武蔵村山資源リサイクルセンターで中間処理し、容器包装プラ700tを市内の民間施設で中間処理。

(1)武蔵村山市の著作権法侵害「転載記事の大幅改変」(2013年9月26日)

 武蔵村山市の補助金で作成される消費生活展(市共催)冊子に掲載する各参加団体の原稿に対して、従来市当局による検閲と変更が行われてきた。福島原発の爆発2年後の2013年9月、「環境を考える市民の会・むさし村山」の広報誌「むさし村山環境ニュース 新第3号 2013年5月5日(こどもの日)発行」からの転載記事「子どもたちへ」を同冊子へ提出したところ、同年9月26日に市当局による大幅改変が行われたので、第41回消費生活展冊子への掲載を断念した。
 本転載記事に対する大幅改変は、著作権法第20条の著作者人格権(同一性保持権)の侵害であり、憲法21条の保障する表現の自由を踏みにじる蛮勇である。

 市当局による改変稿(削除=黒線、変更=赤字)を下記に転載して記録する。
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                        子どもたちへ
 みなさんは、2011年3月11日の福島原発震災をまだ覚えていますか。
学校で原子力発電所(原発)や放射能について学びましたか。
  
私たち大人は、原子力安全神話にだまされて、地震と津波の国に54基もの原発を造り、広島原爆の120万発分もの使用済み燃料(死の灰)を溜めました。そして、日本は大地震活動期に突入しました。次の巨大地震による原発の爆発崩壊で、日本が滅びる予感と無力感にさいなまれています。これから10万年以上にわたって死の灰をあなたたち子どもに押し付けた責任を取ることもできません。
 今、大人ができることは、すべての原発を即時停止して原発の爆発崩壊をくいとめ、死の灰をこれ以上増やさないことです。
 原発がなくても、天然ガス、石炭、石油などの化石燃料で数百年は大丈夫生活できますです。化石燃料から排出される炭酸ガスによる地球温暖化も心配する必要はありません。21世紀になって、太陽活動が低下しており、地球の平均気温は上がっていません。これから寒冷化することが心配です。寒冷化すると、凍死や作物の不作による餓死が多発します。日本では江戸時代(小氷期)の近世三大飢饉(享保、天明、天保)に苦しみました。
 大人たちが無責任に押し付けた原発と死の灰の問題を考えてもらいたくて、いくつか質問を作りました。答えをゆっくり考えながら、深刻な問題から目をそらさない大人になってください。
l  福島原発から飛んできた放射性物質(死の灰)で子どもたちの(甲状腺)がんが2,3年後に多発することが予想されます。「ミスター100ミリシーベルト」や「ダマシタ」で有名な先生の教えでは、被曝は一年100ミリシーベルトまで大丈夫とのことです。でも、20ミリシーベルトでも胸のレントゲンを一年に400回撮ることと同じです。平気ですか? 法律は一年1ミリシーベルトです。
l  原発の死の灰は、風に乗って200km以上も飛んできて、雨や雪と一緒に落ちてきます。東京では、浜岡原発が一番心配です。東海地震が30年以内に88%の確率で起きることが予測されていますが、東南海・南海地震と三連動すれば浜岡原発は吹っ飛びます。死の灰が偏西風に乗って数時間で東京を襲います。どこに逃げますか?
l  原発から大量に出る使用済み燃料は何年も原発プール冷やし続けなければなりません。でも、ほとんどのプールは10年以内に満杯になります。東京でも保管しますか?
l  原子炉は40年くらいで老巧化して運転が危険になります。あと10年か20年でほとんどの原発は老朽化しますが、廃炉の技術は確立されていません。莫大なお金もかかります。放置しますか? 
l  原発の使用済み燃料や放射性廃棄物は10万年以上厳重に貯蔵管理しなければなりません。氷河期も来ます。どこに、どうやって貯蔵しますか?
 原発の死の灰放射性物質による被曝恐怖のない社会をめざして、太陽光、風力、地熱などのクリーンエネルギーを進めましょう。勇気をもって脱原発を進めてください。あなたの未来の子どものためにも、死の灰をもうこれ以上増やさないでください。
 現在は天然ガス、石炭、石油などの化石燃料による火力発電の高効率化と太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーの研究開発が進められています。去年の夏に証明されたように、原発などなくても電気は十分足りています。
 1986年4月26日のチェルノブイリ原発事故や福島原発震災で、遅ればせながら原発の危険性に気が付いた多くの大人たちは、いつ発生するか分からない巨大地震による原発の爆発崩壊と放射能による環境といのちの破壊をくいとめるために、原発の再稼働に反対しています。
 そして、福島の子どもたちの内部被曝をとても心配しています。2013年2月13日、3人目の子どもの甲状腺がんが福島県から報告されました。さらに、7人の子どもに甲状腺がんの疑いがあるということです。子どもの甲状腺がんの発生率は通常100万人に1人程度ですから、4万人中で3人~(最悪)10人は、単純計算で通常の75倍~250倍です。福島の子どもたちのがんが増えないことを祈っています。
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 予研村山分室にP4施設が建設された当時の事情を記載した資料として、武蔵村山市議会会議録、市報むさしむらやま、および富久尾浩武蔵村山市議会議員の著書から抜粋して下記に転載する。

(1)1981年12月24日の武蔵村山市議会での「P4施設建設等についての厚生省の措置に関する意見書」に対する伊澤秀夫議員の討論

 「第1点は、P4施設建設にあたって厚生省が口頭によるあいさつ程度で市の了承を得たとする点につき、その不当性であります。すでに新聞紙上で報道されておりますように、科学技術庁理化学研究所が谷田部町にP4施設を建設しようとするにあたり、町当局に正式に了承を求めていることに比べれば、今回の厚生省のやり方がいかに地方自治体を無視した官僚的なやり方であったかがはっきりするのであります。
 第2点は、P3クラスの実験室については、市には何もいわず、市民にも何も知らせず極秘にこれを完成させ、かつ厚生産業委員会で明らかになりましたように実験室の試運転を行なっていることであります。にもかかわらず本日の新聞報道によれば、厚生省は自分の土地に何をつくろうとかってだといわぬばかりの発言をしたとされておりますが、このような考え方が18世紀、主権の絶対性の認められた時代ならともかく、今日では通用するはずがないことも明らかであります。以上のように厚生省の官僚的秘密主義のやり方は、まことに不当であるといわざるを得ず、われわれは市民を代表して断固抗議するものであります。
 さらに、聞くところによれば厚生省は東大和市の大和基地あと地、このあと地にP4施設をつくりたいと打診をし、東大和市からあと地利用計画は、もうきまっているということで断わられたということで、このような経過から本市に正式な了承を得ることをせずに、今回のような措置をとったのであれば全くもって許しがたいといわなければなりません。」

(2)1982年2月1日発行の市報「むさしむらやま(第307号)」掲載の「予研のP4問題」

 「韓国型出血熱やラッサ熱など国際伝染病の防疫体制や治療法を確立するため、国立予防衛生研究所が市内の同村山分室に建設した、わが国初の高度安全実験施設『P4』の安全性問題で、1月12日、荒田市長が厚生省へ出向いて要請した結果、『安全性について、市民の合意が得られるまで実験を開始しない』との確約を得ました。
 『P4』施設は、航空機の発達で国際間の人的交流が盛んになるにつれ、発展途上国から未知の伝染病が先進国に持ち込まれるケースが増えてきたので、その防疫体制や治療法を研究するため、昨年6月、学園地区の国立予研村山分室内に完成したもの。病原性の微生物を取り扱うには、その危険度に応じて『P1』から『P4』までの4段階の施設が定められていますが、この施設は、世界でも5番目という『P4』の最も厳重な施設です。しかし、危険な病原を扱う施設だけに、その安全性をめぐって、地元住民に大きな不安となっています。
 この日の要請では、まず、市長が森下厚生大臣あてに要望書を提出しました。内容は①施設建設が、口頭によるあいさつ程度であり、これをもって市側が了承したと解する厚生省の考えは遺憾であり、撤回を②『P3』クラスの実験施設の改造も、市に説明もなく行われ遺憾であり、今後こういうことがないように③P4施設の安全性について市民の合意が得られるまで実験開始を差し止めること―の3点を申し入れたものです。
 続いて、P4施設に対する住民不安の実情を訴え、実験開始の延期などを要請しました。これに対し、三浦公衆衛生局長が、実験延期を確約したほか、設置されるP4の安全監視委員会のメンバーに、『市が推薦する学識経験者を加えることも配慮したい』と答えました。
 なお、市議会では、昨年12月24日の本会議で、『市民の合意が得られるまで実験開始を控え、安全性が確認されないときは施設移転を行うべきである』などを要請した『P4施設建設等についての厚生省の措置に関する意見書』を全会一致で採択し、厚生大臣あてに提出しました。」

(3)1982年6月25日の武蔵村山市議会での富久尾浩議員のP4施設についての一般質問と高橋貞夫経営管理室長の答弁

富久尾浩市議会議員
 「さる3月26日の予算特別委員会の中で市側から最終的に安全性が確認され、実験が開始される場合協定書か覚え書きをかわす必要がある旨の考えが示されております。私が危惧いたしますのは、地元の説得に当たるであろう厚生省側が、地元自治会側と合意に達する以前に市が協定を結んでしまうようなことがあった場合、反対運動が行政の手によって分断されてしまうということであります。そこで最終段階でかりに覚え書きなり協定を交わす場合には、厚生省と武蔵村山市に加え、地元の自治会等反対運動されている団体を協定の当事者に加えるべきではないかというふうに考えます。あるいは市が厚生省と協定を結ぶにあたって、その前段として市と自治会とが文書による覚え書きなり協定を結ぶ必要があるというふうに考えます。」

高橋貞夫経営管理室長
 「ご指摘の3月26日の予特の中で協定書、あるいは覚え書き等が答弁されておりますが、ただいまご指摘になりました中で厚生省と武蔵村山市が行なうんではなく、自治会も含めた中で協定書というものを結ぶ必要があるというように、最終的な処理については、その方法でやってほしいというようなご指摘でございますので、それらは十分尊重いたしましてそのような方法で考えていきたいというふうに思っております。」

(4)富久尾浩市議会議員の著書「デスマッチ議員の遺書(2001年)」

「第三章 行政の失態の裏事情
危険な病原菌の研究施設を歓迎

 以前から学校や住宅密集地にある国立予防衛生研究所の中に、予防法も治療法も確立されていないラッサ熱等の病原菌を封じ込める、国内唯一の施設(P4実験室)が完成し、環境衛生の部長が開所式にお祝いに行ったことが、市報の記事で判明し、議会がその失態に振り回されてすったもんだすることになったのである。
 学校や住宅に隣接している場所に、危険な病原体の研究施設を作った厚生省に対し、議会と地域住民は総反発したが、市は何の問題意識もなかったのだからお粗末である。
 厚生省側は『市の了解は得てある』と言い訳するものの、市役所には一度あいさつにきただけで、その後、市から何の連絡もないことを好都合に、勝手に建設してしまったことも分かったので、多くの議員が一般質問で取り上げ、問題意識に欠ける市の姿勢を追及したのである。
 わたしは、市民や議会が知らないうちに実験の協定をしないことを約束させ、厚生省内でも国際伝染病防疫対策実施要綱案が八三年来放置されていることと、市民運動が起きてから、市民に向けて施設の安全性を説いていた東大医研の関係者が患者発生の保健所への届け出を四ヵ月も怠っていたずさんさを突き、関係者の話は信用できないとして、国に施設の移転を求めるよう迫ったのである。
 市議会は周辺住民の反対陳情を全会一致で採択のうえ、施設の撤去を求める意見書を可決して厚生大臣に送付した。後ればせながら市は議会側の強い姿勢を背に受けて国に移転要請を続け、数年かかったが、施設の研究部門を戸山庁舎に追い出すことができたのである。
 当該施設の市民生活への影響を考えてもいなかった行政の失態を議会が一致して救った貴重な一例である。」

 厚生省の1982年以来の確約 「P4施設の安全性について市民の合意が得られるまで実験を開始しない」を反故にして、2015年8月3日、塩崎厚労相と藤野武蔵村山市長が感染研村山庁舎BSL4(P4)施設の稼働に合意した。武蔵村山市は「稼働協定は、厚生省と武蔵村山市だけでなく反対団体も含めた中で締結する」ことを1982年6月の市議会で約束していたが、市議会も反対団体も無視した市長の独断専行は今後の市政に禍根を残す。

 合意内容に関してBSL4 施設の使用目的に注目したが、8月3日付の厚生労働大臣確認事項にある「村山庁舎のBSL-4 施設の使用は、感染者の生命を守るために必要な診断や治療等に関する業務に特化する。なお、制約なく研究目的で使用することに対する地域住民の懸念を払拭するよう、コミュニケーションを積極的に行いながらBSL-4 施設を使用する。」の記述は、BSL4 施設の使用目的は診断、治療、研究など何でもありと言うに等しく、BSL4施設稼働反対の市民は強い衝撃を受けている。他方、市長の会談後のコメント(8月3日)は「 大臣からは、会談の中で私が申し上げた要望事項に対する確認事項に沿って施設の運営を行うとの約束をいただき、特に施設で実施する業務は、感染者の生命を守るために必要な診断や治療等に関する業務に特化することや、国内にエボラ・ウイルス等の病原体がないため、現実的には、当面検査以外の業務を行う状況にないことを前提として、更に、当市以外の適地におけるBSL-4施設の確保について検討し、結論を得るとのお話もいただいたので、村山庁舎のBSL-4施設の稼働は、やむを得ないものと判断する。」である。
 厚生労働大臣確認事項と市長コメントにある「診断や治療等に関する業務に特化」には常套の「等」が付加されており曖昧さがあるが、厚生労働大臣確認事項にある「制約なく研究目的で使用すること」の文言は市長コメントにはない。「研究目的で使用」の文言の有無は、村山庁舎BSL4施設が診断や治療以外の研究業務にも使用できるか否かの肝であり、厚生労働大臣確認事項と市長コメントの齟齬が姑息な茶番劇であれば、武蔵村山市民として憤りを禁じ得ない。
 武蔵村山市当局は8月7日になって、厚労省から「感染研村山庁舎の運営は8月3日付け厚生労働大臣確認事項に沿って対応する」との回答(8月5日付け)を受理した旨ホームページに掲載したが、市当局が厚生労働大臣確認事項を8月3日以前に確認したのは明らかである。8月3日の厚労相と市長との合意は武蔵村山市民にとっては寝耳に水であったが、市民の合意などとは無関係な平成28年度予算の概算要求期限に合わせた出来レースであり、長崎大BSL4施設設置の予算要求も呼応して行われた(文科省は概算要求を8月21日に決定した)。

 合意の翌日(8月4日)には、厚労省がエボラウイルスなど危険な病原体の輸入の検討を始めたことが報道された。オウム真理教の炭疽菌散布(1993年)によって日本はバイオテロ容認国とみなされ、1999年の米国議会で病原体やその遺伝子の分与禁止が決定されたが、バイオテロ容認国のレッテルは剥がされたのであろうか。市長コメントにある「国内にエボラ・ウイルス等の病原体がないため、現実的には、当面検査以外の業務を行う状況にないごとを前提」の記述は、国内に輸入病原体があれば検査以外の研究業務を容認することを意味する。
 2015年8月7日、厚労省は感染研を特定一種病原体等所持者および感染研村山庁舎のBSL4施設を特定一種病原体等所持施設に指定した。厚生労働大臣確認事項では、生物兵器(テロ)に使用される可能性のあるBSL3・BSL4病原体は感染者の生命を守るための研究対象になり得るが、国家安全保障の観点から特定秘密に指定されることも想定される。市民には戦前の731部隊の再興を危惧する声もあるが、杞憂であることを願う。

 感染研は2014年12月に「感染研村山庁舎施設運営連絡協議会(感染研協議会)」を設置して地元自治会の代表4名を委員(24人以内)に指名した。そして、地元住民(反対団体)は一切の発言を認めない傍聴人としての出席が許された。村山庁舎BSL4施設の稼働に反対する「感染研村山庁舎BSL4施設の稼働に関する市民連絡会」は第一回、第二回、および第三回感染研協議会での議論(資料)についての4通の公開質問書を提出したが、正式な回答を得ることはなかった。「感染研村山庁舎BSL4施設の稼働に関する市民連絡会」は、2015年8月3日以降「感染研村山庁舎BSL4施設の稼働中止と移転を求める市民連絡会」に名称を変更した。
 1981年建設の老朽化BSL4施設が巨大な首都直下地震に耐え得るはずもなく、劣化BSL4建屋は通気パイプの取り付けが困難なためスーツ型施設に変更もできず、BSL4施設のグローブボックス型キャビネットは市販の検査機器(RT-PCR法)を用いる検体検査や動物実験に不適であり、ウイルス分離法によるエボラウイルス病(EVD)検体検査はBSL4施設で数日(一週間以上)かかるので、一刻を争う治療現場での有用性に疑問がある(RT-PCR法によるEVD検体検査はBSL3・BSL2施設において数時間で可能)等々の指摘を安易にスルーする感染研のリスクコミュニケーション能力、そして、感染研BSL4施設の見学と概要説明でバイオ安全神話を信じる市民のアンケート記入意見{BSL4施設見学会(3回)の参加者は合計70名で、アンケート意見記入者は38名。安全性理解者は意見記入者の7、8割(~30名)で見学者の半数以下。}を「BSL4施設の安全性についての市民の合意(理解)」と見なし、30年に及ぶ武蔵村山市民の稼働反対運動の歴史を独裁的にスルーする市長と行政当局の自治能力に失望する。
 BSL4施設の稼働期間は、首都直下地震の発生、重大事故の発生、新設BSL4施設への移転、または残り十数年の耐用年数経過までであろう。

 BSL4施設の設置場所に関するWHO勧告について、長崎大学の見解が2014年12月8日のニューストピックス「BSL-4施設の設置場所に関するWHO(世界保健機関)の見解について」に掲載された。
http://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/about/info/news/news1659.html

 これまでもWHO勧告の解釈に関する議論がなされてきたが、今回、長崎大学はWHO担当者から「BSL-4施設が正しく建設され、適切に運営されるのであれば、都市の中心部に建設されたとしても問題ない。」との回答を得たとして、バイオ安全神話をアピールしている。

 以下に長崎大学の見解に対する疑義を記しておきたい。 

(1)WHO文書「Safety in health-care laboratories (1997)」および「Laboratory biosafety manual (2004)」はWHOの公式文書ではないので、WHO担当者からの回答が担当者の個人的見解であり、WHOの公式回答ではない可能性がある。

(2)WHO担当者の回答「BSL-4施設が正しく建設され、適切に運営されるのであれば、都市の中心部に建設されたとしても問題ない。」は、「正しく建設」の建設基準が不明であり、日本のBSL4施設に対して鵜呑みにすべきではない。ちなみに、立川断層に近接する武蔵村山市街地の狭い敷地にWHO勧告以前に設置された感染研村山庁舎の老朽化したBSL4施設は、「WHO勧告への適合」、「『官庁施設の総合耐震計画基準(2007年改訂)』および『国家機関の建築物及び付帯施設の位置、規模及び構造に関する基準(2013年改訂)』による震度6~7の首都直下地震に対する耐震性能」などのバックチェックは行われていない。
 「正しく建設」の審査(バックチェック)抜きで「都市の中心部に建設されたとしても問題ない」とするWHO担当者の文言を日本のBSL4施設に対するバイオ安全神話のアピールに利用するのは詭弁である。

(3)長崎大学の見解「欧米諸国の高度封じ込め実験施設や危険度の高い実験施設を有する病院や研究所の多くが、大学構内や市街地に建設され稼働しています。WHOは、これら市街地の立地について問題にしたことはありません。」は、欧米諸国の施設に適応しても、地震・火山国でありバイオ施設規制法のない日本のBSL4施設に対しては(2)と同様に不用意な詭弁である。

(4)WHO文書「Biorisk management: Laboratory biosecurity guidance(2006)」(感染研翻訳版)に記載されている「自然のリスク」の記述「バイオリスクとは、偶発的または意図的なVBM(防護・監視を要する重要な生物材料) の放出に関係した有害事象だけに限らない。地理的にリスクがある地域に設置されている実験施設の、封じ込めや実験施設バイオセキュリティを脅かすような、自然災害(地震、ハリケーン、洪水、津波など)もまたリスクである。こうした地域で実験室施設を建設したり維持したりする際には、自然災害でVBM が放出されたときに起こり得る被害を考慮する必要があり、(これを踏まえて)容認できるバイオリスクマネジメント規定を計画すべきである。」は、地震などの自然災害におけるVBM漏出による被害を考慮する必要性を規定している。
 BSL4施設を有する感染研は、市民説明会などで、上記バイオリスクに関するWHO規定を無視して、「漏れること無し」「漏れても安全」「近辺リスク無し」などのバイオ安全神話をアピールしている。

(5)WHO文書「Safety in health-care laboratories (1997)」および「Laboratory biosafety manual (2004)」は、文書表題「Safety in health-care laboratories」の「in」が明示する通り、研究所や病院の施設内部での感染リスク低減(安全)のためにバイオ実験施設の設置場所を規定すると理解する。しかし、WHOは人間の健康を基本的人権の一つと捉え、その達成を目的としていることを考慮すれば、施設外部の一般公衆への感染リスクの低減は、WHO文書の規定外であるとしても、施設内部での感染リスク低減よりも厳しく勧告されていると想定できる。
 この意味において、長崎大学が誤った情報であるとする「バイオ施設は人里離れた場所や離島につくるようWHOが勧告している」や「BSL-4施設の市街地への建設はWHOの勧告違反」などの一般市民の主張は、施設外部の一般公衆への感染リスク低減に対してWHO勧告から想定される基本的人権の表明であると理解すべきである。

2015年3月武蔵村山市議会会議録から市長答弁の一部を抜粋して転載する。

 「私が知り得た情報の中でも、国立感染症研究所のウイルス第一部長のお話ですと、海外でもBSL-4施設から病原体が漏れ出した例は聞いたことがないというお話をいただいておりました。しかし、地元としては、万が一危険な病原体が外部に出たらという住民の不安は 払拭されていない状況ということは認識をしております。施設の稼働に対して反対の立場というのは過去から変わっていない状況にあります。
 そして、将来的な施設の移転でございますけども、病原体に対する治療法やワクチン開発等の研究を行うためには最新設備を備えたBSL-4施設の新設が必要であるとされており、さらに、その建設地は大学等の研究機関がある科学的基盤が整備されている地域が望ましいとされております。国立感染症研究所村山庁舎のBSL-4施設は、昭和56年に建設され既に三十数年が経過していることから、最新設備を備えた施設とはとても言いがたく、また周囲には大学等の研究機関も立地していない状況にあることから、このために新たな施設が適地に建設された際には、国立感染症研究所村山庁舎のBSL-4施設を新たな施設に移転していただきたいという強い思いに変わりはないところでございます。
 そして、先ほど、国立感染症研究所村山庁舎でなくても、BSL-3施設で陰性、陽性が確定できるのになぜ持ってくるのだろうというお話もありました。現在はウイルスの遺伝子を増幅して調べるのが主流だそうでございます。検査にも数時間かかる、また装置も大が かりになり、検体を専用施設に持ち運ぶ施設がある、国立感染症研究所村山庁舎は、という課題が現在はあるそうでございます。
 そこで、民間の医薬品のメーカーが、現在数時間かかっている検査を15分から30分に短縮するような研究の成果も出ていると伺っております。 これは、わざわざこちらまで持ってこなくても、その医薬品のメーカーでそのような取り扱いができて、検査カートリッジで患者の血液を入れて、装置にセットするだけで陰性か陽性かがわかるというようなことらしいので、いろいろなところでこれからは期待をしていきたいというふうに思っております。
 武蔵村山市としては、過去から一貫して姿勢は変わっていないということだけは御理解いただきたいと思います。」 

 BSL4施設に関する調査研究「BSL-4 施設を必要とする新興感染症対策」(責任機関:国立感染症研究所 研究代表者:倉根一郎)が、2006年度~2008年度にわたって科学技術振興調整費によって行われた。研究報告書によると、 BSL4施設の整備については、既存のBSL4施設は「レベル4病原体あるいは未知の病原体による重度感染症に対する感染症対策のための病原体検査」に特化し、「重度感染症制圧のための基盤的研究(病原体の病原解析、治療法開発、ワクチン開発等)」は動物実験に適したスーツ型の新設BSL4施設で行うこと、そして、新設BSL4施設の立地条件としては、地震等日本における特殊性を十分に考慮し、大学等の研究施設が周辺にあるなど科学基盤が十分整備されている地域に建設すべきことが提言された。
 多額の国費(3億円)を投入し、20人に及ぶ共同研究者の参加により得られたBSL4施設の整備に対する提言を尊重して、既存の村山庁舎施設は感染症対策のための病原体検査に特化するとともに、基盤的研究を行うための新設BSL4施設の適地選定を国策事業として推進すべきである。

 しかし、既存の村山庁舎施設を病原体検査に特化しても、BSL4施設の稼働が必ずしも必要ではないことが今回のエボラウイルス病(EVD)のアウトブレイクで明らかになった。
 病原体検査はエボラウイルス病(EVD)などの(疑似)感染症患者が発生した場合に、基盤的研究によって研究開発された検査手法{病原体分離法、遺伝子検出法(PCR法)、抗体検出法など}を用いて行われる。EVDの場合、病原体分離法は感染の危険性があるのでBSL4施設が必要であるが、検体検査に時間(数日)がかかるので、一刻を争う治療現場での有用性に疑問がある。コンゴの患者データの分析では「治療開始が1日遅れると死亡率が11%増加する」ことが示されている。
 海外のEVD治療現場で用いられるRT-PCR法による検体検査(確定診断、治療支援、退院決定)は短時間(数時間)で行えるのみならず、検体処理過程の最初に病原体を不活性化(感染の危険性が消滅)するので、BSL3・BSL2 施設で実施できる。感染研村山庁舎でのEVD確定診断のための検体検査もRT-PCR法によってBSL3施設で行われた。

 村山庁舎は立川断層に近接しており、敷地は狭く、周辺には、小学校、特別支援学校、小児療育病院、医療センター、特養老人ホーム、福祉総合センター、図書館、児童公園、災害時避難指定公園、商店街、都営団地、一般住宅などが密集している。1981年3月、村山庁舎の前身である予研村山分室にP4(BSL4)施設が市民はもちろん武蔵村山市当局にも危険性の説明(リスクコミュニケーション)もなく建設されたため、市民の反対によりBSL4実験停止が30年以上継続し、上記調査研究(倉根一郎代表)に対しても、村山庁舎をBSL4施設の稼働・新設の適地に選定しないよう八千筆に上る署名運動(2008年)が行われた。
 市報「むさしむらやま 第307号(1982年)」に掲載されている通り、厚生省の三浦公衆衛生局長は1982年1月12日「P4施設の安全性について市民の合意が得られるまで実験を開始しない」と荒田市長に確約した。感染研(厚労省)は市民の信頼を裏切らないよう本確約を守るべきである。

 2014年3月には、日本学術会議が「我が国のバイオセーフティレベル4(BSL-4)施設の必要性について」(笹川千尋委員長)の提言を行った。本提言は将来のBSL4施設新設に関するものであり、上記報告書(倉根一郎代表)との重複もあるが、感染研村山庁舎の既存BSL4施設稼働の必要性には一切言及していない{笹川千尋委員長言明(第五回感染研協議会)}。BSL4施設新設に対する日本学術会議提言を下記に転載する。

(1) 重篤な感染症の対策上、病原体分離に基づく検査を行い得るBSL-4 施設が必要である。
(2) 重篤な感染症に対する対策および国際貢献の観点から、病原体検査に加え、病原体解析、動物実験、治療法・ワクチン開発等の研究が可能な最新の設備を備えたBSL-4 施設の新設が必要である。
(3) 新施設の建設には、大学等の研究機関がある等、科学的基盤が整備されている場所が望まれる。また、地震等自然災害による使用不能事態に備えてできれば複数の地域に建設することが望ましい。
(4) 新施設の建設に当たっては、地元自治体、地域住民とのコミュニケーションを準備段階からとり、十分な合意と理解と信頼を得つつ進める必要がある。
(5) 新施設は国が管理・運営に責任を持ち、また、国の共同利用施設としての組織運営がなされるべきである。

 首都直下地震[多摩直下地震(M=7.3、震度6弱~6強)、東京湾北部地震(M=7.3、震度6弱)]、海溝型地震(元禄型関東地震M=8.2、震度6弱)、および立川断層地震(M=7.4、震度6強~7)の発生確率が、近年、急上昇した。
 感染研村山庁舎BSL4施設は「官庁施設の総合耐震計画基準(2007年改訂)」および「国家機関の建築物及び付帯施設の位置、規模及び構造に関する基準(2013年改訂)」による下記の耐震性能が要求される。

 ① 危険物(病原菌類)を貯蔵又は使用する室(施設及びこれらに関する試験研究施設として使用する官庁施設)については、大地震後に発生する災害及びそれに引き続いて発生する可能性のある二次災害に対して、官庁施設及び周辺の安全性を確保すること。

 ② 設備機器、配管等は、大地震時の水平方向及び鉛直方向の地震力に対し、移動、転倒、破損が生じないように固定すること。

 村山庁舎BSL4施設は1981年に建設されたが、新耐震基準施行(1981年)以前の設計である。耐震改修が 2000年に行われたが、耐震工事の施工内容は不明であり、建屋各階ごとの質量・剛性分布の不均等、基礎・耐震壁の強度不足、コンクリート・鉄筋の経年劣化、建屋基礎の無数のひび割れなどが指摘されている。30年以内の発生確率が70%とされる首都直下地震などの大地震に対して規定①による周辺の安全性を確保するために、 2000年の耐震改修のバックチェックと施設建屋の耐震補強を早急に行うべきである。
 BSL4施設の安全キャビネットは4本の脚が止め金具で床に取り付けられ、病原体保管庫は側面が耐震ベルトで補強されているが、安全キャビネット、病原体保管庫、飼育棚、飼育ケージなどの設備機器は、首都直下地震などの大地震に対して規定②による固定強度が要求される。
 
 宮城県沖地震、兵庫県南部地震、東北地方太平洋沖地震によって、東北大学や神戸大学の動物実験施設は飼育棚の転倒、飼育ケージの落下、実験器材の転倒、建物の亀裂などの多大な被害を受けた。多数(数百匹)の動物がケージから逃げ出したが、幸いにして建物は倒壊を免れ、施設の扉が閉まっていたため実験動物の施設外への逃亡は防がれた。
 これらの事例から、BSL4施設が主都直下地震などの大地震で破損・倒壊すれば、飼育棚、飼育ケージ、安全キャビネット、病原体保管庫などの転倒・破損によりウイルスが付着した実験動物が近隣の人家へ逃亡することが想定される。

 1997年にはじめて感染者が発生した高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)、2002年に突如感染者が発生し2003年に終息したSARSコロナウイルス、2001年のバイオテロに使用された炭疽菌などのレベル3病原体は、通常のインフルエンザウイルスと同様にエアロゾル感染する。
 レベル4病原体であるエボラウイルスは、高温度・高湿度の西アフリカでは安定したエアロゾルが発生しにくいので、エアロゾル感染の可能性は低いとされる。しかし、(北半球の)低温度・低湿度の冬季におけるエアロゾル感染(エボラウイルスは4°C以下で50日間生存)が深刻な脅威になる可能性が指摘されている。ちなみに、1980年に根絶宣言が出された天然痘ウイルス(レベル4)は容易にエアロゾル感染するので、近年も天然痘ウイルス兵器の疑惑情報が絶えない。米国では全人口3億人分の天然痘ワクチンが備蓄されている。
 大地震によってBSL3・BSL4施設が破損して、施設外部に漏れた保管病原体のエアロゾルが風に流され病原体が死滅する前に近隣の人家へ流入すれば、エアロゾルによるレベル3・レベル4病原体感染の危険性がある。へパフィルターはエアロゾルを100%捕捉できないし、破損の可能性もあり、エアロゾルの施設外部への常時漏出も否定できない。感染実験に使用された実験動物の排泄物中の病原体がエアロゾルとして施設外部に排出される可能性もある。
 
 村山庁舎ではホルムアルデヒド(70kg/年)などの有害化学物質が大量に使用され、施設外部へ常時排気されている。 外気へ放出された有害化学物質が風に流され、拡散による濃度低下前に近隣の人家へ流入すれば、化学物質過敏症や発癌などの健康被害をもたらす危険性がある。有害化学物質は排気して薄めるのではなく、排出ガス処理装置を設置すべきである。
 バイオ施設(村山庁舎)周辺の環境アセスメントや疫学調査の実施を法的に義務付ける必要がある。

 WHO文書「Biorisk management: Laboratory biosecurity guidance(2006)」(感染研翻訳版)に記載されている「自然のリスク」の手引き「バイオリスクとは、偶発的または意図的なVBM(防護・監視を要する重要な生物材料) の放出に関係した有害事象だけに限らない。地理的にリスクがある地域に設置されている実験施設の、封じ込めや実験施設バイオセキュリティを脅かすような、自然災害(地震、ハリケーン、洪水、津波など)もまたリスクである。こうした地域で実験室施設を建設したり維持したりする際には、自然災害でVBM が放出されたときに起こり得る被害を考慮する必要があり、(これを踏まえて)容認できるバイオリスクマネジメント規定を計画すべきである。」は地震などの自然災害におけるVBM漏出による被害を考慮する必要性を規定している。
 感染研は、感染研協議会や市民説明会などで「漏れること無し」「漏れても安全」「近辺リスク無し」などのバイオ安全神話を繰り返しアピールしているが、バイオリスクに関するWHO規定に違反するバイオ安全神話は撤回すべきである。

   エボラウイルス病(EVD)の確定診断・治療支援・退院決定のための検体検査をウイルスを不活性化しないウイルス分離法によって行えば、ウイルス有無の測定に数日(一週間以上)かかるだけでなく、感染の危険性があるので、感染研村山庁舎の老朽化BSL4施設の稼働やBSL4施設の新設が必要となる。コンゴのEVD患者データの分析では「治療開始が1日遅れると死亡率が11%増加する」ことが示されているが、検体検査に数日を要するウイルス分離法は一刻を争うEVD治療現場での有用性に疑問がある。

 海外のEVD治療現場での検体検査は、ウイルスの遺伝子を高感度かつ短時間(数時間)に検出するRT-PCR法によって行われている。RT-PCR法は、確定診断や退院決定に必要なウイルス有無の測定だけでなく、治療支援での治療・薬剤効果の判定に必要なウイルス量の増減も測定できる(リアルタイムRT-PCR法)。RT-PCR法は、検体処理過程の最初にタンパク質分解酵素を混入し、ウイルスの被膜を分解して遺伝子を検出する。被膜の分解によってウイルスは不活性化され感染の危険性が消滅するので、RT-PCR法はBSL3・BSL2施設で実施できる。
 村山庁舎での確定診断のための検体検査も、8号棟のBSL4施設を使用せずに、同棟にあるBSL3施設を使用してRT-PCR法によって行われている。ちなみに、村山庁舎BSL4施設の安全キャビネットは市販の検査機器を用いるRT-PCR法による検体検査に不適なグローブボックス型である。

 BSL3・BSL2施設は大学、独立行政法人、企業の研究所などが多数保有しているので、患者が収容された特定・第一種感染症指定医療機関に近いBSL3・BSL2施設において(派遣)検査員がRT-PCR法による検体検査を行えば、検体の輸送時間が大幅に短縮され、確定診断や継続的治療支援が安全迅速に実施できる。国際医療研究センターに収容された患者の検体検査は、近くにある感染研戸山庁舎のBSL3・BSL2施設でRT-PCR法により行うべきであるが、現在のところ、患者の検体は警視庁の厳重な監視下に置かれ、首都高・一般道を2台のパトカーで村山庁舎へ輸送される。
 検体の採取時にウイルス不活性化処理をすれば、検体輸送が安全かつ簡便に行える。エンベロープを分解する不活性化処理によって不安定なRNA型遺伝子が輸送時間内に劣化する可能性があれば、検体採取時にエンベロープを保存する方法で不活性化処理を行い、RT-PCR法による検体検査時にエンベロープを分解すればよい。

 長崎大と東芝が共同開発したエボラ感染検査のための迅速(30分)検査キットがアフリカの治療現場で試用され、RT-PCR法による診断結果と100%一致する精度が確認された。2015年4月には、日本政府がギニアに迅速検査キットを供与した。国内でも、患者の収容病院で迅速検査キットによる応急的感染検査を行えば、パニック対策や二次感染対策をさらに迅速に講じることができる。

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